輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

英語下手でも、誠意や姿勢が伝わることが大切

どこの国の取引相手とも大体英語でコミュニケーションを交わすのだが、英語は上手い必要はない。買い手の会社で使われている言語、すなわち日本語でコミュニケーションをしたいのだが、相手は日本語を知らない。だからこちらの意識としては英語を使う便宜を図ってやっているというくらいの意識で良い。

多分メールでコミュニケーションは交わすのだが、英語力そのものの良し悪しより、英語が下手でもこちらの誠意や姿勢が相手に伝わることが大切である。その点英語を得意とする大学の卒業生には問題が多い。英語力そのものを重視する考え方から抜け出ることができないようだ。

コミュニケーションが熟練してくると相手の会社あるいは担当者の考え方や信用度が何となく分かる。問い合わせに対する返事が遅すぎる。言っていることにどこか矛盾がある。そんな会社とは取引をしない方が無難であろう。

逆に最初からこちらを信用するというのが相手会社の方針だったりすると、こちらも信用することができる。今まで取引した会社は大体そのようだった。だがもちろんそんな会社ばかりではない。最初から騙すつもりで取引を開始する会社はないだろうが、コミュニケーションの行間から相手の無理解さが垣間見えることがある。そんな会社からはどんなに商品が魅力的でも輸入仕入はしない方が良いだろう。

今は種々の方法で情報が入手できるが、こちらの会社の情報や考え方など、相手は多分分からないだろう。だからできるだけ詳しく丁寧に教えてやる必要がある。

そんな情報の与え方で大体相手もこちらを信用して良いかどうか考えるだろう。もしこちらがすでに相手の会社が所在している国の他社と取引をしているなら、そのことを情報元として教えて上げれば良い。

逆に既存の取引先に頼んで、新規に取引しようとしている会社にこちらのことを紹介してもらうのも良いだろう。その程度のことをやってくれないとすればその既存の会社もあまり親切ではないと考えて良い。

自国のことも教えてやるのも良い。日本の文化、風習、取引慣行などを前以て情報として与えてやることも重要だ。海外には手形制度がないだろう。だから日本にはそんな制度があるが、こちらはそんな制度を使わないと言ってやるのも、相手としては新しい発見になるかも知れない。

できるだけ相手の会社に必要な情報を予見して教えてやらなければならないし、そうすることでこちらの誠意も伝えることができる。

アメリカ人が初めて仕入取引をしたい会社に次のような英語を書いたのを知った。「This is a formal registration of our interest in doing business with your company. Sample billing is acceptable.」
=「このメールであなたの会社と取引をしたいと正式に申し入れます。サンプルに付いては納品書を切って頂いて結構です。お支払いいたします」というくらいの意味だ。

ちなみに「this」はこのメール、「registration」は登録くらいの意味、「billing」は納品書を切ること。である。

何と上手な英語だろう。

日本人でこのような英語の表現ができる人はごく稀だろう。どんなに上手い英語を書こうとしても、英語が相手の母国語であるから、英語の文章力では太刀打ちはできない。相手は取引先であり、英語の先生と考えれば良い。相手の使う英語をこちらも使わせてもらえば良いではないか。

もっと簡単に相手のことを知り、こちらのことも知ってもらう方法がある。それは相手の会社を訪問することだ。こちらは時間も費用も掛かる。だからそれだけで、相手はこちらをある程度信用してくれるだろう。

アメリカのある会社に打合せに出かけたことがある。

話し合いが終了して雑談になると、たまたま部屋に「buyer′s guide」という分厚い冊子を発見して見せてもらった。

そこに買いたい商品があったので、電話を借りてその会社に電話をした。「I want to buy your product」と私が言うと、相手は「I want to sell our product」と答え、それだけで取引をする意思の確認が取れた。

電話に出た人はジョークの上手い人だったようで、好感が持て、すぐに飛行機で相手の会社を訪問することにした。

飛行場は小さく、私は背の低い日本人だったので、すぐに発見されて事務所に行き、商品を注文して取引を開始した。もちろん支払い条件は商品到着後ということで、何の拘りもなく相手は了承した。

貴方が誠実な人ならどんなに英語が下手でも一所懸命それを伝えようとすれば、意思は通じるものだ。逆にこちらに裏の意図があるとそれはいずれ露見する。そんなことは止めた方が良い。