輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

消耗品を優先して売る

会社が扱っている商品はたった1種類ではないはずだ。扱い商品の構成を考えて営業を掛けるのは営業マンの仕事の一つだ。一般の人に売るには何千万人の人が顧客の対象になるが(これを民生と言う)、業務用だと売れる数が限られる。

考えなければならないのは、消耗品を優先して売るということである。消耗品はなくなれば買ってくれる訳だから、経費を掛けて営業に出かける必要がない。

一度売込みに成功すれば待っていても自動的に注文が入り、それを処理すればことは足りる。例えばプリンターを販売している会社ではこの点を考慮して極めて高い替えインクを販売している。

だからプリンターの販売価格を低く抑えて、兎に角自社のプリンターを買ってもらう作戦を立てる。そうすれば自動的に替えインクが売れていくという訳だ。

この場合注意しなければならないのは販売価格だ。余り高いと模造品を他社が製造して売り出す。そのうち品質がだんだん良くなって自社の客を取られる。

だから客が他の代替商品を探す気持ちにさせるような価格設定は好ましくない。他社の製品と比較して価格設定をしなければならない。

私も最近プリンターの純正ではない替えインクを買ったが、価格は半額以下で、充分用を足している。メーカー曰く、プリンター本体が故障することがあるので、純正品以外は使用しないで欲しいと言っているが、何、構いやしない。プリンターが壊れればまた買えば良いのだ。どうせ本体は安いのだから。

輸入商品を売る場合もそうだ。

並行輸入という仕入携帯があるので、自社が独占販売権を持っていても駄目だ。特にアメリカでは卸売業者は禁止されてもどこにでも販売する。入手はさして困難ではない。

ただ製造するにしても並行輸入するにしても、ある程度の数量を仕入れなければならないから、警戒しなければならない競合相手は数量を多く扱える業者だ。

そういうことで消耗品の全売上に占める割合が高ければ高いほど、会社は楽に営業ができる。気を付けなければならないのは営業が簡単な分、商品の品質などは絶えず改良しなければならないことだ。

並行輸入対策としては、自社の利益率は販売価格の35%くらいが妥当なようだ。しかしこれも商品によるので、そこは研究の余地がある。

計算の根拠は、メーカーは輸出する場合も国内で卸売業者に販売する場合も同じと考えれば良い。そうすると卸売業者が貴方の会社に販売する場合は少なくても15~20%ほど利益を取るだろう。すると並行輸入業者の仕入価格はその分上昇する。

そうであればこちらが35%ほど利益を取って、相手も同等の販売価格なら相手の利益は15~20%だ。しかし顧客に取っては並行輸入業者からは正規代理店とは同等の価格で買う意味がない。少しでも安く買いたい。10%も正規代理店より並行輸入業者が安く売れば並行輸入業者の利益率は5~10%しかない。これでは在庫を抱えてまで並行輸入商品を扱う意味がない。

ただこれも商品によりけりだ。毎月何億も売れるような商品であれば少ない利益率でもビジネスは成り立つ。

この点医薬品の販売は一度納入に成功すれば、後は楽だし、利益率も高い。製薬会社が倒産しないのはこの辺に理由がある。

だからジェネリック医薬品の製造を業とする会社が出現するのだ。特許を取得している薬品は特許期間を過ぎるまで、その特許を使った商品を販売することができない。

しかし特許は15年で切れる。そうすると一斉にジェネリック医薬品が売り出されるのだが、最初のメーカーは医薬品の組成の全てを特許出願時に開陳しない。だからジェネリック医薬品と先発品は厳密に言えば製品が違う。だからジェネリック医薬品の使用は注意が必要だ。

消耗品が販売商品の大きな割合を占めているなら、会社の経営は安定するが、反面莫大な開発費が掛る場合がある。競合他社が同じ目的の商品を安く販売する場合も多いし、性能が陳腐になって、もう売れなくなることも多い。

今では仁丹などは聞かなくなったし、お菓子などはすぐに飽きられてしまう。販売額が大きく、知名度が高いほど会社は安泰と思うだろうが、それがそうではない。

社会のニーズも変化すればそれに合わせた商品が開発されるだろう。

宣伝広告も重要な販売手段で、これにも資金を投入しなければならない。安穏と無策で胡坐をかいていれば会社の運命は風前の灯と言わなければならない。