輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

資金繰りで一番困るのは、新製品の開発・発掘費用

資金繰りは社長、経営者の一番大切な業務の一つである。会社は設立してからいつも順調に運営されていくことは稀で、ちょっとしたトラブルが資金繰りに直接悪く影響してくることも多い。そんな時腐らず、地道に努力すれば道は必ず開ける。あるいは少人数もしくは一人で小さな規模から始めすこしづつ拡大していく方法もあるが、それでもこの資金繰りの悩みはいつも付きまとう。

トヨタ、パナソニックなども会社が設立されて日が浅い時には資金繰りに大いに悩んだと言われる。人事も大切な業務であるが、資金繰りが破綻すると直接会社も破綻するという意味では会社の運営は資金繰りに掛かっていると言っても過言ではない。その中で新商品の開発・発掘について考えてみた。

新製品の開発・発掘のコツ

今まで取り扱っていなかったあるいは製造していなかった商品の開発業務は会社の発展に欠かせない大きな業務である。どんな商品もいずれ陳腐化する。だから常々新商品の開発には大きな力を注がなければならない。

資金繰りは今日の課題であるが、この新商品の開発(取り扱いも含めて)は中期的な意味合いで攻撃的な業務だ。

社長は絶えず人と会い、情報を仕入れながら新しい商品のニュースを入手しなければならない。一番のニュースソースは人である。直接その時の業務に関係がなくても絶えず人と会ってなければならない。

電話、メールなども要件を進めるには便利なツールではあるが、このような攻撃的な作戦は直接相手と面談することが大切だ。メールでは言いたいことを言い尽くせないし、質問もできない。その点電話はまだましだが、それでも不思議と新しい話しは出て来ない。情報を持っていそうな人がいたら、こちらから出向こう。

ものおじしてはならない。頼めば人は叶わず会ってくれる。会う人は会社の経営者ではなく、末端の営業マンなどが良いだろう。実際に商品に一番近いという意味では実際的だからだ。

また不思議なことに能力のない人の方が良い情報を持っているケースが案外多い。何故なら営業マンは話しが好きだからだ。だが面白い情報を有能な人に漏らすとその情報を利用されるおそれがある。だからあまり有能ではなく、ただ聞いてくれる人に話すのだ。

また情報を持っている人を思い切って雇用してしまうのも一つの手だ。

もちろんその人は仕事ができないが、情報をもたらすという意味では有用かもしれない。もしその方法が余りにやり過ぎだと思えば、接待をすれば良い。酒の席では口も軽くなり、ご馳走をしてもらったお返しに貴重な情報も漏らしてくれる可能性がある。

輸入業務をしている会社に勧めるのが現地人をエージェントにすることだ。

購買額の5%くらいを支払い、新しい製品を発掘させれば良い。現地に住む日本人は駄目だ。郷に入っては郷に従えという諺もある通り、例えばアメリカ人にはアメリカ人同士、どこか気脈の通じるところがあり、情報の入手方法、難しい商品の仕入方について日本人では困難なことも案外簡単に成就してしまう。

但しそのエージェントが会社の属している場合はアルバイト的でいいが、独立したりすると問題も発生する。5%だけのコミッションでは生活が困難な場合があり、こんな時は仕入れが多額でなくてもベースになる金額をある程度支払わないといずれその人が破綻するだろう。これに付いては後述する。

展示会に行くのは古典的な方法だ。

ここで商品を見つけるのは一つの方法ではあるが、展示会に出品するくらいの会社がすでに販売代理店を持っているだろうし、ないとしても一定の過酷な条件を受け入れないと販売代理店にはしてくれないだろう。

もちろんそうなるには独占的販売権を取得しなければならない。そうでなければ折角宣伝広告をして当該商品の市場がある程度確立しても自社の努力の結果を他社に利用されてしまう。

展示会に行って、商品を見るのではなく、商品を身にきてくれる人を見ていると良い。中には展示会に出品するほどの資力はないが、ユニークな商品を製造しているかも知れない。またはその人がどこかのメーカーの販売店かもしれない。

手辺り次第に声を掛けよう。もし的外れでも相手は怒らないし、駄目もとである。この方法で私は何十もの商品を発掘した。

アメリカは新しい国だ。こちらが相手と比較して全く弱小でも怯むことはない。取引を申し込めばすでに取引先がない場合は簡単に取引を開始してくれるだろう。

ただ販売実績が芳しくないと取引を止められ、新規の取引先に鞍替えされることも多い。また市場調査のためにしばらく取引をし、その後相手の会社が日本に販売会社を設立して直接販売をするケースがある。これをオークレイという眼鏡のメーカーにやられて努力が水の泡になったこともあった。

どんなに商品が良くても相手の会社の誠実度、あるいは政策を熟慮して取引を開始するべきだ。これは海外に限ったことではない。商人とはそのようなもので、誠実な会社は10社に1社くらいしかない。

仕入担当あるいは新商品開発担当は商品の説明を聞いただけで市場性が高いか低いかを即時に判断しなければならない。後日連絡すると言うやり方は相手にインパクトを与えない。相手の腰が引けると有利な条件での取引ができないことも多い。

だから営業担当や仕入担当、開発担当は絶えず市場の状況を把握していなければならない。即答。これは大切な作戦である。

アメリカの文化はおちょくりと驚ろかしの文化だ。もちろん品質が高くなくては土俵に乗れないが、その上で驚かせてやれば良い。あるエージェントの社長が何か新製品の提案をしてきた。「Do you think to sell・・・」とまだ商品のことについて話す前に私は「Yes」と言ってやった。

そのころは何でも売る自信があったので、新製品を紹介してくれれば売れると思った。だが商品のことも分かっていない。しかしこの「Yes」は相手の意表を突いていた。相手は笑ったが、それから完全にこちらの能力を信用した。でも結局その商品は扱わなかった。

ヨーロッパでは知性や教養が重視される。商業取引で会っているのに、雑談の間に一般的な話しが出る。教養のない人はあまり重要視されないだろう。アジアはまたアジアで独得の考え、習慣がある。

見たところアジアは欧米と比較して商業に付いては未熟で、嘘が多いように感じる。そして論理的ではなく、何に付けても相手に頼る、金のことしか頭にない。そのように見かけるのは偏見かもしれないが、誠実だけでは取引は円滑に進まないようだ。貿易に関しては項を改めて述べる。