輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

海外で重視されるのは、会社?個人?

アメリカに行って仕事の話しをする時に驚かされることがある。それは個人をとても重視するという考え方だ。ある時聞かれた。

「お前は中村を知っているか」というものだ。中村という姓は日本中どこでも聞かれるとても一般的な姓だから、中村を知っているかと聞かれても答えようがない。

私が中村は日本には100万人はいるのではないか。その質問には答えられないと返答すると相手はがっかりとした表情を浮かべた。ヨーロッパではそんな質問を受けたことがないが、やはり個人を会社より重視する傾向にあるようだ。

もちろん世界的に有名な会社は別だろうが、取引を始めるに当たって担当者個人の人柄や能力が大きな判断基準になると考えて良い。これを別の角度から見ると、こちらが小さな会社で、相手が巨大企業でも相手は取引に躊躇しない。

私が勤めていた会社は日米の合弁会社で、アメリカ側の会社は超巨大企業、日本側は吹けば飛ぶような零細な企業であった。もちろん相手の要求は巨大企業のそれであったが、極めて合理的で私はそのやり方、考え方から大いに学んだ。

輸入したい商品を発見したら、直ちに取引を申し込んだら良い。相手の会社の誠実度ややり方を考慮しなければならないのは当然だが、相手の会社の大小など考慮に入れる必要など全くないというのが私の経験からくる感想だ。

アメリカはまだ歴史も浅く、開拓者精神が残っているのがそんなことの原因ではないかと分析するが、個人の仕事振りを重視する気持ちを持っていることは確かだ。

ヨーロッパでも同じような傾向がある。

アメリカと違ってヨーロッパの国々は歴史が長い。しかしここでも小さな会社と取引をすることに迷いはないようだ。

あるイタリアの会社と取引をしたことがある。この会社の商品は日常汎用的に使用される所謂民生のものだった。何度もその会社を尋ね、社長やその息子、娘とも仲良くなった。私の娘の結婚式にも招待したら豪華な贈り物を娘、婿、妻に持って来た。

相当高額な品物で、私はやり過ぎではないかと受け取るのに躊躇したものだが、その後私の会社以外の会社と取引は中止してしまい、俺はもう酒巻と以外商売をしないと宣言して私を驚かした。

欧米の会社が重視するキーワードは「friend」すなわち友達である。

ビジネスは金を儲けるためにする行為だが、どこかそこから派生して友情というものを求めるようだ。

日本ではよっぽどでないと、ビジネスの関係から友情という感覚は生まれないが、これは日本あるいはアジアと欧米の人の生活態度の違いからくるのではないか。

日本でも「家族ぐるみ」の付き合いと言葉があるが、これはどうも商売以前からある関係からの延長線上にあるように思う。国際間のビジネスにおいては欧米の方が先輩であるので、このような思考は尊重することにしている。

日本は会社が主体になっている。これも日本人の「和」の精神から来ているから会社という団体行動の結果だろう。担当者がどこか他の会社に転職するとその会社と直ちに取引関係に移行するということはない。

だから我々は担当者の能力、性格を分析する努力をあまりしない。だが相手は違う。取引関係にある時、私個人のことは相当分析されていたように思う。

クリスマスは贈り物のシーズンである。

アメリカではその時期だけで店は年の半分ほどの売上を達成するようだ。当然私にも贈り物が届けられる。船で運ばれるので、2月ころに着くので何事かと思うが、クリスマスプレゼントなのだ。

私はジョークが好きだが、仕事には真面目だと思っている。取引相手からのそのクリスマスプレゼントを容れたボックスを開けるとネクタイが二本入っていたことがあった。

目を驚かしたのが蛙を図案化したものだ。回りの人は気持悪いと言うが私は面白いと思った。もう一本はとてもセンスの良い、オーソドックスなものだった。

それで私の性格が読まれていたのを確認した。その後仕事で彼に会った時にその蛙のネクタイを締めていると、それを見て相手は「ふふふ」と笑った。それからますます二人はますます「friends」になり、ビジネスは拡大していった。

アメリカ人は面白いし、ビジネスをやるには簡単な人たちが多い。文化もない国で食べ物は美味しくないが、ビジネスという行為は大いに楽しめる。