輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

輸入通関に必要な乙仲の見分け方

国は国内産業を守るため、海外からの輸入製品に関税を掛ける。関税を掛けると輸入原価が上がり、国内商品との価格差が無くなったり、少なくなったりするからである。しかし近年日本は工業立国として工業製品の品質も良くなり、関税は下がる傾向にあると言え、関税が0の商品も少なくないのが現状だ。

輸入する商品が日本国に入る前に種々の理由で税関という役所の検査、審査を受けなければならないのは誰もが知っていることだ。これを通関という。しかし相変わらず手続きがややこしく、また面倒なため、通関を専門に扱う業者に通関業務を任すのが通例だ。

ただ任せただけでは通関はできない制度になっている。会社が通関をするに当たって、登録をして、番号を取得しなければならない。これを日本輸出入者標準コードと言う。税関はその会社の過去の実績などを記録するためこのコードを使うことになっている。

過去に何らのトラブルや提出義務のある書類の不備がなければその会社の実績レベルが1~5に向上して、通関の手続きが簡易化される仕組みになっている。

例えば5の会社では例外的な場合以外は書類のコンピューターによる審査だけで、通関が許可される。提出しなければならない書類は通関業者と話し合い、遺漏のないようにすることをお勧めする。

実績レベルが比較的低い会社に対しては、輸入貨物の検査の割合が高くなるし、書類の審査が厳密になるので、通関に掛かる時間や費用が多く掛かることもある。

ただし税関が時には一斉検査をすることがあるので、レベル5の会社でも検査を経なければならないことがある。この検査には費用が掛かる。麻薬の輸入阻止や動植物の検疫、絶滅危惧種の輸入禁止(これに関してはワシントン条約と言う名の条約が各国で締結されている)などが目的である。

輸入通関だけを業務にしている会社は乙種仲買人と呼び、それに対して輸送手段(船舶、航空機)も持ち、海外からの輸送も引き受ける会社を甲種仲買人と称する。

ただ通関業務と運送業務をする会社は別であるケースがほとんどで、通関業者が運送業者を見つけてくれるケースも多い。通関業者は乙仲と呼ばれて輸出入業者はここを通常窓口にする。

航空機による輸出入は迅速を旨とするので、乙仲業者も迅速に活動して、優秀な会社が多い。船舶が輸送手段の通関をする会社は反対で、優秀な会社を見つけるのに苦労をする。ただ会社によっては船舶部門と航空機部門に別れているところもあるので、部門別に優劣を判断しなければならないことも多い。

乙仲は過当競争を勝つ抜くため、大手の会社が率先して関税や輸送料を立替えたりしたが、利益が薄くこんな慣行はほぼ無くなった。

従って輸入業者は通関前に運送料や関税を支払う資金を用意しなければならない。輸入業者は輸出業者への前払いやこれら通関費用を販売前に調達しなければならないので、資金負担が大きく資金量が少ない会社は輸入を業務にすることは困難である。

英語など使用言語の修得や資金負担などに鑑み、かつては輸入業者の数は少なかったが、昨今英語の教育が進み、その点の問題は解消されたので、輸入業者の数も徐々に増加して、業務のうま味は減ったようだ。

航空機で運送する場合、使う航空会社や運送便を慎重に選ばなくてはならない。先日商品をハワイまで輸出した時にはシンガポールを経由することで到着が3日ほど遅かったが、運送料は極めて安かった。時間にある程度余裕がある時はこのような便を使うのが得策である。

輸出相手国が特殊な関税率や通関に関わる手続きを定めているケースがある。ハワイがその一例だが、関税などに関して特に注意して調べておく必要がある。

また例えばイタリアから輸入する場合などは商品が中途で抜き取られることがある。

しかし相手国はこれに対してほぼ対策を講じない。保険を掛けておくことが必要だ。税関の運転手、検査技官、航空会社の荷扱いの担当者、誰も信用がならない。

商品を梱包したケースがまるまる紛失する場合は航空会社に運送個数不足として請求ができる。どちらにしても商品が紛失する理由はまちまちで、それに対する知識を持ち、対策を怠ってはならない。

時には水濡れも発生するし、フォークリフトでケースが破損することもあり、日本では起こり得ないような運送事故が発生する確率は極めて高い。

事故が起こった時は速やかに関係者に報告して対策を取らないと、事故受付け期間が経過してしまうことがあるので要注意だ。