輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

売る相手、売り方の使い分け

商品を売るには相手が必要である。当たり前のことだが、この事実をしっかりと把握しなければ売込みに成功しないで、無駄な時間を浪費してしまう。

相手が大きな会社であれば購買担当がいるし、小さい会社では社長自らが仕入れる決定をすることもある。相手が社長であれば物事は単純である。

社長は会社の利益を考慮して、仕入れるかどうかを決める。そこには複雑な事情が入り込まない。貴方の会社が取引をするのに相応しいか、商品の品質と価格の関係、取引条件、在庫状態などは自分の希望に合うかなど純粋にビジネスのことを考え決定する。

しかしある程度の規模になると事情は全く違う。

中規模の会社では仕入れ担当が功名心や自分自身の利益のために事業の経営とは関係のないことを持ち出すケースが多い。

一番困るタイプの担当者は怠惰な人だ。仕入れ担当は会社の資金を仕入に使用するから、社長あるいは上司から信用されている人で、自分自身で間違いを犯さないかを過度に神経をとがらすものだ。

新しい取引先と取引するにはある程度のリスクが伴う。

仕入れた物品が不良でなければ支払いをする。この点でリスクがないように思われるが、実は仕入は営業より難しい業務である。

今までの仕入先とは気心が知れているし、その会社の欠点や長所が見えている。しかし新しい仕入先の情報は少ない。倒産寸前の会社かも知れないし、必要な在庫を確保していないこともあるだろう。債権債務の履行だけに関してはリスクがないとしても無形の問題点が発生する可能性があるのだ。

こんなことを考え過ぎると会社は運営できないが、ある程度の規模の会社は利益体質にある。だから新しい会社と取引するとか、長い目で見ると利益を生むような機械、システムの導入の消極的である。

旧態依然としている会社では仕入担当の責任者が全く無能か、本当の責務を果たさない人が多い。即ち働かないのだ。こんな人に売り込むのは大変だ。

新しい会社と取引を始めるのは仕入れ担当として最も重要な仕事のはずだが、動かない。利益をもたらす商品を仕入れなくても自分の評価は下がらない一方、仕入れても自分に対する評価が上がらない。だから仕事をしないのだ。

もっと大きい会社になると新規の取引は絶望的なことが多い。

どんなにすばらしい商品の導入を提案しても、見向きもしないだろう。だが最近は規制緩和という状態が進んできているので、全く不可能かというとそうでもないケースがある。

しかしこのケースでも商品の仕入は会社の担当者が決定するが、従来の仕入先を通じての納品になる。そこはそこで各自取引条件が定められていて、手数料を要求されることもある。

このような中企業や大企業と取引をするのが得策であろうか。それとも敬遠してもう少し小さな会社を取引相手にした方が効率的であろうか。

結果から言うと貴方の会社に一番大きい利益をもたらすのは貴方の会社と同規模の会社だ。新規に取り引きを始める時はその会社に関する情報は少ないが、自分の会社を振り返れば大体困っていることあるいは得意なことなど大体想像でき、自然に取引が進行していくものだ。

だから中規模の会社と取引をしたいなら、貴方の会社が中規模になれば良いし、大規模の会社と取引したければ貴方の会社も大規模に成長すれば良い。

商品は売込みに行くより相手が買いに来てくれる方が売り易い。

買いに来てくれるのは相手がその商品の購入を欲しているからだ。買いに来てくれるには宣伝活動が必要になる。

宣伝広告はもちろん資金が必要で、反応がなければ資金は無駄に費消したことになるので、その点リスキーだが、それを怖れてはならない。

顧客はどこにいるのか分からないので、探さなければならないし、売込みに行く時間も掛る。その点広告を見て買いにくる客はすでに何らかの仕入計画を持っているはずだ。だがそれを見極めるテクニックが必要だ。

店舗で女性が洋服を買う場合、黒の服を買いたいのにそれに逆らってブルーを勧める店員がいるが、愚の骨頂である。私にもそんなことをされた経験がある。その時はものも言わずその店を去った。

化粧品のセレクトショップを運営していたころの話しである。

店に入ってきた客は自分独自の方針を持っているらしく、何か考えながら商品を選んでいる。

私は店員がその顧客に話し掛けなければ良いのにと思っていたら、やはり店員が何か説明するためにアプローチした。その客は店員の説明を聞くふりはしたが、頃合いを見て、店を出て行ってしまった。

こんな客もいた。どうも優柔不断の人らしく、店員を求めてきょろきょろしている。それを見た店長が早速近づき、その人に会う商品を勧めた。その客はすぐに店長の意見に賛成して、不急の商品まで買ってくれた。

ビジネスの相手はコンピューターではない。人はそれぞれ個性を持ち、考えも違う。それを見極める違らが営業マンには必要なのだ。