輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

消耗品(ご飯)のつぎは、機械(おかず)の販売だ

さて消耗品の販売数量をある程度確保できれば、今度は単独の機械または器具の販売も考えなければならない。

消耗品が日々のご飯と考えれば機械や器具の販売はおかずという意味合いを持つかもしれない。従って会社の維持は消耗品、発展は機械などということになるだろう。

ある程度大型の機械を買ってもらうとその機械の耐久期限が来るまでは新しい機械を買ってもらえないだろう。しかし機械は10年も持つかも知れない。これでは営業成績が上がらない。

そこで考えるのが新規機能を備えた新しいモデルの開発、販売だ。

マイクロソフトなどのソフトを搭載したコンピューターのメーカーはこれで凌いでいる。しかしンピューターのソフトで新しく開発したものはバグも多くなり、使い勝手が悪くなることもしばしばである。だから一番新しい機種の性能が旧モデルより良いとは限らない。

できれば本当に有用な機能が新しく搭載されたモデルの開発に努めたい。だがこれには研究開発費が相当に掛かる。それでもやるか、現状のままで様子を見るか、経営者が状況や会社の体力を考慮して決断しなければならない問題である。

人の頭は不思議なもので、充分に性能を発揮している機械があっても、新しい機能を備えた機械が発売された場合、その機械を購入したくなるものだ。

人は他の動物と違って脳が極端に発達して。この人の長所はまた短所にもなる。現状にある程度満足できたとしても、それでは金でものを買うという脳を使用する行為ができない。ついさして必要でないものを買ってしまうものだ。

そんなニーズを営業マンは絶えず見ている必要がある。何の具体的な要件がなくても顧客の会社や工場に出向くのはこういう理由もある。

だが資金に余裕がなければそんな人の願望は達せられない。やはり経営状態が良く、資金量がある程度豊富な会社と取引したい。余っている資金はあぶく銭とまではいかないが、ついつい無駄使いするものだ。

工具はまた違う。

機械装置と違って使用耐久期間も短く、そして何より失くしてしまうことが極めて多い。だからこれらは準消耗品として営業的観点から見ることができる。

単価が極めて低い商品、例えばビス、ネジ、ステッカーなどは高い利益率を稼ぐのに持ってこいの商品である。仕入単価8円のステッカーを例えば350円で何万枚も売ったことがある。

1万枚売っても350万円の売上にしかならないが、利益は342万円。利益率は何と売上に対して98%近い。これらは倉庫料もほぼ掛からないし、事務所の片隅にでも保管しておいて、出荷は手の空いている事務員でもできる。

この範囲の金額では買う人もあまり考えない。何しろワンコインである。子供の小遣い程度の金額に対して頭は使わないだろう。

また種類が多く、在庫を躊躇する商品も会社の利益に大きく貢献することがある。

前述のステッカーもそうだし、ラメも同様だ。ラメの販売をしたことがあるが、全て在庫すると270種類ほどある。

競合他社は我が社が全ての色の在庫を持っているのを知っていて、よく売れる色だけを在庫していた。客の注文した色がない場合は我が社が持っているので、顧客に最終的には迷惑を掛けないと考えたのだろう。

我が社は全ての色の在庫を持っているという強みを生かし、販売価格は他社より50%近く高かった。それでも注文は入る。これも事務所の片隅に在庫してあり、出荷は事務員が行った。専門の営業マンもいない。

顧客は3色のラメを必要としている時には、例えば他社に在庫がある2色は価格の安い他社の製品を買うが、あと一色は我が社から買わなければならない。

そんなことが続く期間が1,2年あったが、そのうち顧客は面倒になって価格が高くても我が社から全てを買うことになってしまった。送料を両社に支払うと送料込みの仕入れ価格は結局同等程度になるからだ。

そんな状態が続き、我が社が日本の市場を独占してしまった。

しかし売上金額は月額たったの2,300万円。ただ利益率は65%であった。でも馬鹿にならない。利益は150万円を超えていた。

このように市場のニーズが極めて小さい商品については充分な在庫を持つと市場を独占することも可能だ。要は営業マンがいつも感覚をシャープに持ち、そんな商品の発見に務めなければならない。

営業マンの仕事は物を売るばかりではない。市場にニーズがあるのに供給のない商品や供給が不確実な商品、その他種々情報を会社にもたらすという使命がある。

しかし経験ではそんな自覚をしている営業マンは少なく、時には会議をして営業マンの売る以外の仕事についても、話し合わなければならない。