輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

営業マンの資質

一社にあまり偏重して販売することはできれば避けたい。一社に全売上の20%も販売しているとトラブルが起こった時に、対応できないし、無理難題を押し付けられた時、断れなくて、大きな損害を被る時がある。

ある会社でこれが起こった。相手の大会社は何等かの都合で仕入先を変えたのだ。だからその会社の売上が20%も減少した。これでは赤字だし、仕入れた原材料は一時的に不良在庫になる。

こうして何とか銀行融資を受けていた会社は融資を断られ、高利の金を借りてしまった。それを知った全銀行が融資を打ち切り、結果その会社は倒産。あっけなかった。

手数は掛るができるだけ多くの会社と取引すべきだ。毎月5万円程度の会社が500社も集まれば2500万円の月商を達成することができる。

その程度の金額だと相手の会社は売込みを受けなくても、商品を入手したければ自動的に仕入をするだろう。500社と取引を新規に行うのは大変であるが、そういう作戦を立てている会社が現実に何社も見た。

その会社のやることは絶えず新規の取引先を作ることだ。2500万円の売上から発生する利益で営業マンは何人も保持することが可能だ。

営業は会社に支えられて行う業務である。仕入担当、経理、倉庫、出荷など。それらに掛る経費は営業の利益から支払われる。営業が利益を上げなければそれらの経費を賄うことができない。

我儘な営業マンはその点を忘れ、自分が営業して利益を出しているから会社が運営できるのだと逆から考える。もしその他の部門の人たちが存在しないと営業マンは舞台のない大道芸人のような立場に置かれる。そんなことを充分頭に入れておれば、他の部門の人たちともトラブルにならない。

出張旅費の精算をなかなかやらない営業マンは経理担当を困らせる。営業日報を出さない営業マンは上司に情報を与えないので、上司は営業計画の立案に困難を来すだろう。

会社で一番困難の仕事の一つが営業であろうが、会社はそれだけでは動かない。営業マンはこんな点をはき違えて経理担当とはいつもいがみ合う。もちろん営業マンには営業マンとしての苦労や考えがあるので、経理担当もある程度は営業マンの立場に沿ったものの考え方をしなければならないのも当然である。

会社の最大の困難の一つが相手会社の倒産である。

もし取引先が多くあり、一社当たりの売上が大きくない場合は売先が倒産しても笑って済ませることができるだろうが、大きな金額が不良債権になった場合、会社は連鎖倒産の可能性が出て来るのだ。

営業マンは会社の最前線の部隊を構成するのだ。最前線がしっかりしないと戦争は負ける。

韓国軍が弱すぎたから中国軍は韓国軍が守る地域から攻めて行き、ソウルも落とされた。最終的にはアメリカ軍が助け、36度線まで侵攻した。現在韓国半島が北と南に別れているのはこんな事情があったのだ。

営業マンは最前線にいる。だから会社の命運は営業マンに掛っていると考えてもよい。営業マンはある程度以上の売掛金を持っている相手の会社の状態を絶えず把握しなければならないし、仕入担当者の顔色も覗わなくてはならない。

賃金の不払い、遅延、噂、社員のやる気がない、社長の悪口。そんなことがあればその会社の経営状態は良いとは言えないし、場合によれば取引を中止しなければならないかも知れない。

その時は残っている売掛金を回収するため、新規の出荷をすることも考えるだろうが、止めた方が良い。

会社は即座に倒産することが少ない。惰性である程度の期間持ち永らえるものなのだ。そうすると売掛金の回収はできる。もし新規に出荷したら、その商品の代金も未回収に終わるケースもある。

相手の仕入担当は今回だけは出荷して欲しいと頼み、攻守逆転する。貴方は相手に無理を言って買ってもらったことがあるだろうし、無碍には断れない。

そんな時は会社の他の部門の所為にすれば良い。経理から許可が出ないと出荷できない。社長が頑固で説得できない。それは嘘かも知れないが許される。

支払いしなければならない時に支払いをしない場合は債務不履行だし、賃金の支払いがされていない場合は取引不能会社ということになる。契約書を交わしていなくても取引の前提になることだ。

ビジネスの世界は弱肉教書が支配する過酷な状態にある。

絶えず戦争をし、いがみ合い、仲直りしながら進んでいく。聞いた話しを利用することもあるし、こちらが不利になり、相手が有利になることは話してはならない。

営業マンは顧客に合わせなければならないし、柔軟な頭を持って種々情報をもたらさなくてはならない。そんな人が会社の他部門の担当者の考えを理解できないはずがない。

しかし経験上、営業マンと経理担当はどうしても意見の対立がある。そんな営業マンは素質に欠けていると考えなければならない。満足の行く営業マンはとても少ないのだ。