輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

仕入をしてはならない会社

売込み、すなわち営業をするには売る商品が必要だ。それは他社からの仕入もあるだろうが、自社で製造することもある。自社で製造する場合は製造部門から営業部門が仕入れるという考え方を取ることが必要だと思える。

そこを区別せずに会社全体を一つとして見る考え方は、それぞれの部門が適正に機能し、生産性を把握できなくする。資金の必要額、支払い条件、人員の配置、仕事の重点をどこに置くかなど、製造と営業では考え方が全く違う。

営業部と製造部が支払い条件や時期などを話し合い、現実に支払い作業をするのが好ましい。一人の人が両方にまたがって仕事をしている場合にはその人に支払う給料などを案分して計算しなければならないだろう。

例えばトヨタは昔二つの会社だった。

一つは製造部門の「トヨタ自動車工業」と一つは販売部門の「トヨタ自動車販売」で、それぞれ独立採算であった。

それが一つの「トヨタ自動車」になっても製造と販売の部門は計算上独立した存在として扱っていると推測する。そのようにすることでそれぞれに部門が適正な業務を遂行し、利益を上げているかが把握できる。

そうすることで、もしどちらかの部門に欠陥があった場合もそれが見つけ易いので、改良が容易であろう。そうでない場合は改めて分析しなければならないし、欠点の発見が遅くなる。

他者から仕入れて販売する場合も、経費を別けて計算すると仕入部門と営業部門のどちらに欠点があるかが判明するだろう。仕入が弱いのか。営業の成績が上がっていないのか、会社を改良、改革するにはそんなデータが欲しい。

他社から仕入れる場合、考えなければならない、あるいは交渉しなければならない点が幾つかあるだろう。仕入が海外からの場合は経費も掛かり、特殊な技術も所得しなければならない。これは後述する。

仕入れる商品が見つかり、ある会社と取引が始まる前に考慮しなければならない最大のポイントがある。いくら商品の質が良く、価格が適正でも相手の会社の経営態度が不当なことがよくある。こんな会社と取引をしてはならない。

取引が拡大するに連れてトラブルの発生度合いが増加するし、もし万一その会社と取引を中止する場合は被害が大きく、会社の危機存亡に関わる事態が発生しないとも限らない。

何の経営理念もなく、突然販売価格を2倍にされたりしたら会社の売上は大きく減少するだろう。あるいは相手の会社がⅯ&Aで経営が他社に移る場合などにも遭遇することもある。

新しい会社と取引する場合はできれば経営のトップとじっくり話し合い、相手の会社が正当に運営されているかどうか確認をしたいものだ。必ずしも全てのことを知ることができるとは思えないが、重要な取引先は絶えずチェックする必要がある。

商品を輸入仕入する場合は要注意である。

アメリカや欧州など、経営者のメンタリティは日本人とは大きく違う。会社の経営者は日本では社長と称され、社会的地位があると見なされる。

だから会社の売却の度合いは少ないが、それでも最近は増加傾向になる。ビジネスは金儲けのためにあるとは言え、大きく見ると社会的な存在でもあるはずだ。だから会社を売却すれば社員は困窮するが、それを単なるビジネスと考えると経営者の行動は違うものになるだろう。

そんな重大なことだけではなく、担当者との意思疎通が図り難い、行動が遅い、売ってやっているという態度で接してくる。そんなことがあるとその状態により取引を始めるのを再考慮した方が良い場合もあるだろう。

ある時フランスの大きな会社と取引をしようとしたことがあった。)

相手の責任者が二人会社にやって来た。事務所が小さかったのが気に入らなかったからか、それとも応対の態度に自尊心が傷つけられたのか、理由は不明だが、その人たちの態度が不遜極まりなかった。私は話しをする前にお引き取りを願った。

さる高名な写真家がいて、ゴルフが好きでハワイからゴルフ用品を仕入れて売りたいと紹介された。私自身が紹介された訳ではないが、話しを聞くと、計画は杜撰で、会社を経営する態度が見えない。

こんな場合はどの会社でも取引をする気が起こらないだろうが、私は話しをする前に「貴殿は写真家に一日でなったのではないでしょう。そこまでの腕を持ち、高名になるまでには大きな苦労があったはずです。我が社も同様です。写真家になるにも会社を経営するにもそれだけの努力が必要なのです。会社経営は断念されたらいかかですか」と意見を述べた。

その後その人がどこかの会社にゴルフ用品を売ったとは聞いていない。立派な人だったので、私の意見を理解されたのだと思う。今も活躍されている。