輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

実は仕入先は売先より貴重

日本でも海外でも接待という制度がある。日本では接待に要する費用の全額が損金として扱うことができないケースがあるが、海外ではこんな制度はない。

顧客の仕入担当者を接待することがあるが、仕入先の担当者にはそんなことはしない。貴方は客と仕入先どちらがより重要だと思うだろうか。ほとんどの会社では客を仕入際より重要と考えるか自然にそのように振舞う。

一つの商品は会社の該当部署に存在する全ての顧客に販売する。100の顧客に平均5万円の商品を売れば売上は5百万円の計算になる。

だが顧客の一社と取引が何かの理由でなくなった場合の売上減はどの程度の金額になるだろうか。多分5百万円には到底ならないだろう。

実は仕入先は売先より貴重なのだ。

大阪ではオーナーは売先の情報は営業マンに伝えても仕入先はオーナー自ら管理することが多かった。このことは仕入先が売先より大切という意味だ。

しかし売先からお中元、お歳暮をもらうことは少ない。売先から見れば貴方の会社は仕入先である。仕入先にはそんな儀礼はしないのが通例だ。何故なら貴方の会社は商品代金を受け取っているからである。

金銭は商品より貴重という考えがここにはあるが、果たしてそうだろうか。前述の計算でも明らかなように仕入先一社が無くなると会社の売上は大きく減少する。

顧客一社が無くなってもそうはならない。それに一社に偏重して販売すると、もしものことがあった場合の損失は大きい。それに仕入先がなくなると売上現象とともに会社の信用も低下する。

総合的に考えると仕入先は販売先より断然大切な存在なのだ。それを考え、顧客より仕入先を接待する方が会社に取って利益を確保するにはより効果的だと言える。

仕入先は自分たちが顧客から接待されるとは思っていない。別に客の金で飲み食いしたいとは思っていないだろうが、自社や自分が相手に相当重要だと思われているという事実がここにある。

相手は感激するだろう。

そして何よりも貴方の会社を重要視するようになる。但しこれは仕入先と自分が遊ぶのではない。それを考え、心を込めた接待を心掛けたい。

この点は重要顧客を接待するのとは違う。彼らは接待されると自社の金で遊んでいるのに気が付かない。

接待は取引関係を有利に進ませるためにやるのだ。多少高い価格で買ってもらったり、他社とではなく自社と取引をする営業手段である。

広告を出稿している業界紙の会社の専務と仲良くなり、度々接待した。その会社は何かの問い合わせがある度に我が社を紹介してくれ、そのお陰で顧客が大いに増加したことがある。

顧客は接待されても当たり前という気持ちがあるらしく、だから営業が有利に進むことは少ないのだが、仕入先の接待は稀有の出来事で、従って大きな利益に繋がる。

お中元お歳暮に対する出費も接待と同様交際費として処理する。だが虚礼としてのお中元お歳暮はできれば中止した方が良い。それで売上が減少するケースは少ない。何故なら貴方の会社は相手に取って仕入先で、顧客より重要だからだ。

このことを相手は意識していないだろうが、いざ取引を止めようとしてもできないという事態が発生してそのことに気が付く。

しかしこういうことがあった。さる大阪の会社が「お宅は商品を買ってやってもお歳暮も来ない」と苦情というか不平を述べた。私は仕方なくビール20本入りのケースを現物で10ケース送った。

受け取った相手の会社の社長から電話があり、「何か記念日でもあったのか」と言われた。そこで私は「これは10年分のお中元お歳暮です。虚礼にお金を使うよりできるだけ商品を安くしたいと思っている」と答えておいた。

その効果があったのかどうかもうお中元お歳暮を呉れとは言わなくなったのは面倒がなくて良かったと思っている。

兎も角虚礼は営業的には何の効果もない。我が社も送られてきた虚礼の品は全て社員に分け与えていた。社員は仕入先と条件交渉をしないので、ここでも虚礼が如何に無意味であるか分かるというものだ。

さるアメリカの大会社の社長に日本の取引先がビールをお中元として贈った。その社長は意味が分からず、―相手の会社は自分を馬鹿にしているのかーと疑ったと言う。

ビールはアメリカでは下等あるいはカジュアルな飲み物で、人に儀礼的に贈答するものではない。その気があるなら高級ワインであろう。