輸入貿易会社、社長の仕事術

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売掛金債権管理をどうするか

会社の営業マンだけで全ての営業活動をするのが困難であることも多い。こんな場合は卸売り先を通じて再販する制度を設けるのが良い。

その卸売り会社にも営業マンがいるだろうから、貴方の商品の営業に携わる人数はその分増加することになる。日本ではこの制度が多用されるが、これには何点か注意しなければならないことがあるその会社への販売は直接販売をするのに比べて多い。また多くないと意味がない。

そこで問題になるのが売掛金債権の管理である。

比較的売上額が少ないと、仮に債権が回収できなくても、貴方の会社の損害は大きくはないだろうが、一社に大きな額を売ると相手の会社が倒産した場合、貴方の会社が赤字になったり、場合によっては連鎖的に倒産することもある。この場合、債権の回収はできるだけ短い期間にするのが良いし、手形などで支払いを受けるのは厳禁である。またできるだけ相手の通常の支払いの少し前に支払いを受けることも考えなければならない。この辺りの交渉は貴方の会社の体力あるいは商品の重要度などによって決まることが多い。だがそれだけではない。断固とした態度で支払い条件を設定するのも必要かもしれない。

そんな時は取引が開始しないかも知れないが、これは貴方の会社の利益状態にもよる。何としてでもその会社と取引したい場合は相手の要求を呑まなければならないだろう。逆に相手が貴方の会社の商品の販売にあまり力を入れないこともある。ただ扱い商品数を多くして会社の信用度を高めるために貴方の会社の商品を利用するだけかも知れない。そんな会社に限ってある特定の地域には独占的に販売させてくれなどと要求する。これに関してはある期間販売状況などを見てから決定するのが常道だろう。

もう一つの問題は相手の会社の顧客と貴方の会社の顧客が同一の場合である。

一般的に言ってすでに貴方の会社がその同一の顧客と取引している場合は、優先的に販売しなければならない。しかしそのように理屈が通らない場合もあるだろう。卸売り会社とその同一会社の関係が深いなら任せる方が良い可能性もある。

また逆に今まで取引がない再販先の会社が卸売り会社を通じないで、貴方の会社と直接取引をしたいと要求してくる時があるのも事実だ。こんな場合はその再販先会社が貴方の会社の商品を多量に購入したいと考えている時に発生する現象でもある。

あるいは卸売り会社が信用できない、弱体過ぎる、もっと安く仕入れたい、直接の情報が欲しい、何かの原因で取引を嫌っている、など理由は必ずある。その理由に沿って卸売り会社と話し合いをしなければならない。

断りもなく再販先の会社に直接販売してしまうとそれは違法行為で損害賠償の対象になる。ただこれは法律的な問題で、ビジネスの場では訴訟など起こり難い。ただ貴方の会社は契約に当たって要求事項を全てきっちりと書いておけばそんな事態は避けられるだろう。

卸売り会社に多くの利益を与えている場合、即ち貴方の会社の利益が少なすぎる場合、貴方の会社はどうしてもその再販先の会社と直接取引をしたくなるだろう。ここでも低く過ぎる価格で販売した場合、即ち卸売り会社が低く過ぎる価格あるいは過酷過ぎる支払い条件で仕入するとこのような事態が発生するケースが多い。適正な条件というのがトラブルを起こさない重要な事項であろう。

因みに卸売り会社とは在庫を持って販売をする会社のことで、注文があってから貴方の会社に注文をして出荷を依頼する会社は単なる仲買いあるいはコミッションエージェントに過ぎない。

これは江戸時代から続いた考えで、単なる仲買いである会社に対しては大きな利益は与えられないし、支払い条件もきつくなる。それが商習慣であるのにも関わらず、相手の要求が高すぎると前述のような事態の発生が多くなる。これは貴方の会社だけではなく相手の会社も留意しなければならない。

海外に販売する場合、何かのトラブルが発生すると人を派遣してトラブルの解決に当たるか相手に来てもらって話し合いをする。しかしそんなことをすると時間と経費が掛かるので、最初から前払いで取引した方が無難である。しかしそれもケースバイケースである。

そんなトラブルを前以て回避する場合に銀行が支払いの保証をする制度がある。銀行が発行する保証状をL/Cと言う。例え相手の会社が倒産しても銀行が代わって支払いをしてくれる制度だ。

しかし実情この制度は信用ならない。全ての銀行がそうであるかどうかは調べようがないが、日本の銀行は相手の会社が倒産すると絶対に支払いはしない。L/Cは輸出したという書類が整っていると銀行は支払いをしなければならないが、その書類の中の一つの文言でもミススペルなどがあったりするとそれを口実に支払いをしないのだ。

この点を取れば日本の銀行は信用ならない。ただ販売する場合は相手の銀行からL/Cを受けるので、これは国によって違う。それにしてもL/C取引は止めた方が無難だ。これは貿易の項で詳述する。