輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

営業の心得

さて曲がりなりにも会社を創業して、事務所も設営すると最初にやらなければならないことは、商品の販売である。営業マンを雇ったとしても営業の主体が社長である貴方である。営業マンは補助とくらいにしか期待してはいけない。

会社には何の歴史もないし商品数も限られている。それでも個人で事業をやるよりか余程良い状態から仕事を始められるのだ。ただ社長として右も左も分からない。ただ会社という舞台が整えられただけで、自己流の舞を舞わなければならない。

そこには師匠もいなければ振付師もいない。それでも毎日売込みをしなければならない。しかしなかなか売れない。精神が病んでくるし、虚しい日々が待っている。

7年ほど前に創業した会社を観察していたら、創業当時ほぼ毎日売上0の日が続いた。

それが1年、2年と経つうちに少しずつ売上が立ってきて、3年ほどで会社は黒字になった。時々アドバイスを求められたので私が言ったことは「腐らず、努力すれば徐々に売上は立ってくる」ということだった。

その会社は純利益率が15%もあるまともな会社になった。現在設立以来8年弱。その間にもある程度の規模のあるところと取引ができ、またなくなり、紆余曲折があった。

これからは如何に発展させていくかが、その会社に求められることである。外から見ていると社長は誠実で、努力家、しかしスピード感はない。本来はもう少し売上が欲しいところだが、どうもそれが苦手らしい。

この会社は業界であまり扱っている会社がない商品を売っているので、しっかりとした政策とある程度の在庫を持つように勧めた。案外早期に会社が黒字化すると思われたが、そうはいかなかった。黒字化まで3年を要したのだ。

販売価格は同業他社より低く抑えた。どうも品質より価格を重視する顧客が多いので、止むを得ない。それでも利益率は低くない。これはラッキーだった。

満足できるくらいの利益率を確保できても自社の価格は他社より低い。逆から見ると他社はそんなに高い利益率を設定してはならないということだ。そのことは貴方の会社にも当てはまる。

気を付けなければならないのは新規参入者があった時だ。

どのような政策を取ってくるか分からないし、大会社だと販売価格を極端に低く設定してくることもある。そんな会社は価格で対抗するかそれとも支払い条件が極めて良いか。どちらにしても貴方の会社が先達であれば、小さい点で勝負をしてはならない。

本来利益率は高い方が良い。しかしこの会社のように同業他社の利益率が高すぎると適正な利益率を維持するだけで他社との価格競争に勝てる。女性が運営する企業では利益率が高すぎることがしばしばある。

女性は男性に比べて販売額に関する設定数値が低い傾向がある。例えば100万円の売上で、利益率60%のようなことを目標にするが、男性は200万円の売上で利益率が30%を目標に設定したり、できるだけ高い販売額を目標とする。利益額は女性の場合も男性の場合も60万円である。しかし長い目で見ると女性の営業は困難を来すだろう。

あまり利益率が高いと長い間には顧客がそれを察知して、もっと価格が低い仕入先を探すことになる。適正な利益率というのはあるもので、それは扱い商品やアフターサービスの必要性で変化するので、これを頭に入れて利益率を設定するべきだ。

顧客は商品を仕入れるために貴方の会社と取引する。当たり前に聞こえるが案外そうでない場合が多い。貴方と話しをしたい、何となく気が合う、サービスが良いなど、貴方個人の人柄や知識を何となく考えて取引をしているケースも多い。それが人の本性だ。

しかしここでも適正な価格、在庫、アフターサービス、トラブルの解決方法など、商品の売買方式がしっかりとしていなければ、担当者が変った時、相手の経営形態が変更になった時、会社が売却された時には取引がなくなることもある。

私の40年以上に亘る仕入業務の中で、良い商品を売る会社はあったが、尊敬でき参考になる情報その他を供給してくれる営業マンは一人もいなかった。

そういうことを踏まえ、貴方の努力次第で貴方自身が顧客に認められ、そのお陰で売込みに成功するのはそう困難だとは思えない。とくに最近は営業マンの質が落ち、会うのも煩わしいことも多い。

商品は顧客が買いたくなるものでなければならないが、その前にやることは会社と貴方自身を売ることだ。それには豊富な情報、適切なサービスが不可欠で、貴方は絶えず勉強しなければならない。