輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

差別化戦略

何か定まった事業あるいは構想があるから会社を設立する筈だ。全く今までにない新しい事業を立ち上げするか製品を販売するのでなければ、すでにそれと同等のものが市場に存在している。

その場合に新規参入者の貴方はどんな作戦を取るのだろうか。

一つは値段で勝負する方法である。あなたの会社はまだ経費も少なく、安い価格で商品(有形無形の)を販売することができる。

それは顧客を獲得する手っ取り早い方法だが、このやり方では利益率が低いし、会社が大きくなるに従って経費も増大する状態に対応することができない。

古くから存在するスーパーマーケットは安売りからスタートしたが、それではだんだん回らなくなって、販売価格を上げて行き、今では八百屋、魚屋、肉屋など個人の商店より販売価格が高い。その陰には長い時間を掛けた大きい努力があったのだが、なくなっていったスーパーマーケットも沢山あった。

安い価格で商品を販売するのは一番簡単な市場参入の手段であるが、そこには会社の運営上将来大きい困難をもたらすだろう。本来は適正な利益率、高すぎもせず、安すぎもしない価格設定が必要なのだ。

 

従来から存在する商品に少し改良を加える、あるいは販売方法を変革し、が顧客に受け入れられ易くするという作戦もあり得る。

改良点が大きいほど市場への参入は容易であるが、言うほど簡単ではない。

例えば家庭用の機械を販売する場合に、長期間のローンを独自に組むという集金方法を考えてみよう。顧客は月々の家計の中からその商品代金を無理なく支払うことができるが、貴方の会社は大きい資金を用意しなければならないし、商品が他にないようなものでない限り金融機関は融資をしてくれない。

まだ方法はある。

ビジネスではトラブルは付き物だ。従来から付き合っていた仕入先とトラブルを起こし、仕入先の対応が悪いと顧客は別の仕入先を探す。その時に貴方の会社が取引を申し出ると案外すんなりと取引を開始することができるかも知れない。

痒いところに手が届くようなサービスをすることも取引を開始する方法の一つである。

現在では昔と違って、個々の社員の能力、誠意は格段に低い。どの会社もある程度の不満を抱えているはずだ。そこへ貴方の会社が良いサービス、できれば顧客が望む以上のサービスを提供すれば簡単に顧客は獲得できるだろう。これらを差別化と呼ぶらしいが、貴方の会社は競合他社とどこか違わなくてはならない。

サラリーマン時代に懇意にしていた顧客と新しく取引をするという出だしもあるだろうが、数は少なく、それだけでは会社の経費を賄うには利益は少ないだろう。

そうでない大きな会社とたまたま取引ができたとしても、会社の規模が違い過ぎると取引は長続きしない。これに付いては後述する。一番儲けさせてくれるのは自社と同一規模の会社であるのを念頭に置いてほしい。

取引を開始する条件として無理な要求をしてくる顧客もいる。そんな条件を承諾するかしないかは貴方次第だが、ここには大きいリスクがあるのだ。

あるいは評判があまり良くない会社と取引をせざるを得ないこともあるだろう。会社設立当初ではこんなことは日常茶飯事のように起こる。

運が悪ければ相手の会社は倒産するかも知れない。あるいは大きい資金負担を強いられる。こんなリスキーな状態を運よく潜り抜けるか、何とか我慢してまともな会社だけと取引をするか、ここは分かれ目だ。

 

発明家が会社を興すと自社の商品を過信し過ぎるきらいがある。どんなに商品が良くても社会が認めなければその商品は生きたものにならない。

日本の特許出願件数は意匠登録を含め昨年60万件近くあった。中国は130万件程度、世界全体では300万件以上ある。この大半は大手企業によるものだが、その中で画期的なものは少ない。

個人が特許を取得してもその実用には資金や時間が必要で、実際市場に出回るのは極く少数である。特許を取得するくらいの頭脳の持ち主の考え方は一般的ではない。

新しい何かを生み出す能力のある人は反面会社運営に対する考え方が社会に受け入れがたいものが多い。

社長は万能であるべきだと述べたが万能な人はいない。そんな矛盾を抱えながら会社を存続させることができたら、3年程度で大体まとも状態になるだろう。それまでの辛抱だ。