輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

付き合いは貴方の宝

貴方の取引先の仕入担当が退職することがある。もしその人が有能な人なら関係を絶たないよう努力すべきだ、もちろん仕事を通じての直接の関係はなくなるのだが、連絡程度は付けておくことをお勧めする。

その人も生活のため新しい仕事を始めるか、あるいは違う会社に就職するだろう。そうすると思わぬ新しい仕事に繋がることがあるかも知れないし、少なくても情報の交換くらいはできる。

その人が有能なら貴方が一所懸命仕事をしていると今後も付き合うことを了承してくれるだろう。だが貴方がさほど熱心でなければ断られる可能性もある。

優秀な人とは付き合っているだけで、勉強になるものだ。厳しい人は仕事にも真剣で、そんな人を敬遠するのではなく、自分がその人の生徒になったつもりで教えを乞えば良い。

かつて西郷隆盛が勝海舟と会見した時、勝は西郷に政府軍と天皇軍が戦争をすれば外国がその機会を逃さず日本を自分たちの領土にしてしまうと諭し、西郷は江戸の無血開城を決断した。

確かにそのころはアメリカ、イギリス、フランスが日本に武器を持って接触してきており、小競り合い的ではあるが、薩摩や長州と争いもあった。特にフランスは政府に肩入れして、イギリスは天皇軍に味方をしていた。

アメリカは静観の構えだったが、そこにロシアも加わり、勝の言う取り、日本が二つに分かれると二国以上の外国に分断占領される危険性が高かっただろう。

それを勝は憂慮したのだが、西郷にも勝の意見を容れる度量があり、勝もその度量を自分も持とうと努力した。

中国の古い諺に「君子に常なる師なし」というのがある。君子には決まった先生はいない、誰からも学べると解釈される。即ち貴方が君子(仕事の良くできる人)であれば貴方の回りは全て先生で、貴重な情報源と考えられる。

全ての人は貴方とは違う経験をしている訳だから当然貴方とは考え方や行動方式が違う。貴方の目のうろこが落ちるようなことも言うだろうし、経験から会得した貴重な情報ももたらしてくれる。

私は長く輸入の仕事をして欧米から種々の商品を買っていた。

大きな会社も個人の取引先もあったが、大体においてその人たちは優秀だった。だがその人たちと取引が無くなってから、連絡を途絶えさせてしまったので、今では連絡が取れない。

彼らは仕事ではなく遊びに行ってもアテンドしてくれて、旅行会社が企画する旅行とは違う楽しみを提供してくれた。しかし自分の怠慢でそんなコンタクトがなくなり、残念でならない。

こんなことを誰にでも勧めているのだが、現実に実行する人は極めて少ない。仕事の関係がなくなるとどうしても、連絡が途絶えるのは当然だろうが、そのように思い定めて努力をすると案外困難ではない。

知り合いが倉庫を探しているというので、昔大きく仕事をしていた社長さんに紹介した。当時は取引関係でトラブルもあったのだが、担当者がとても優秀だったのを思い出したのだ。

社長さんは私の連絡をとても喜んでくれて、紹介した会社とは仕事を始めて、上手くいっているようだ。何故その会社を覚えていたのか詳細は書かないが、大きく印象に残ったのだ。

営業の場では何が起こるか分からない。いや人生は思わぬことの連続で成り立っているとも言える。先になって貴方が仕事を辞めてもこういう付き合いは宝だ。

トラブルが発生し、それを懸命の努力で解決するとまた違うトラブルが持ち上がる。トラブルはその時心身ともに苦痛をもたらすが、後で振り返って見ると案外面白かったと気が付く。

それも懸命の努力をするからで、ただ成り行きに任せ、相手の会社と取引がなくなるとそれは悪夢でしかない。

そのように考えると仕事上の出来事も全て先生だ。あったこと、努力の結果は後で必ず生きてくる。それを生かすも殺すも貴方次第である。仕事を金儲けの手段としか捉えないのはどうにもやりきれないし、精神が病んでくる。

仕事は楽しもうと思う。貴方の努力の軌跡は自分を豊かにして、良い思い出は心を豊にする。会社からお金をもらい、貴重な経験をできる。願ってもないことだ。