輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

嘘はったりは止めよう

商品の売り込みに来る会社から仕入れるのはよくよく考えてからにした方が良い。そんな会社は営業を強化していて、情報を多くて提供して、どこにでも売込みに行くから同種類の商品を扱っている会社が多いだろう。

もちろん商品の一つとして扱い商品のバラエティーを増やす目的としては許されるが、主力商品にはしない方が良い。

商品はやはり足を使い、少ない情報を元に探すのが賢明だと思われる。そんな営業に力を入れていない会社があるのかと訝るだろうが、これが案外あるのだ。

製造が得意な会社は案外営業が上手ではない。素晴らしい商品を作っているのだが、会社が新商品の開発や改良に頭が向いているので、営業が疎かになるケースが多い。

人手不足も手伝い、どうしてこんな質の良い商品を売り込めないのか不思議な気がする。そんな会社が見つかればどこにでも出向いてすぐにでも仕入契約をしたい。

できれば独占販売権を締結できればなお良い。ただし貴方の会社がその商品をある程度満足がいくほど売れると自信がある時に限る。そうでもないのに独占契約で相手を縛るのは両者に取って良いことではない。

100台しか売れないだろうと計算している商品を300台売れるなどと言うと相手は機械を新規に導入するかも知れないし、生産人員を増員することも考えられる。

そんな時は正直に初年度は100台くらいしか売れないかも知れないが、最大限の努力をする。宣伝広告も打つ予定だとありのまま話し合うのが賢明だ。

ビジネスの場においても嘘、はったりは止めよう。

もしそんなことばかりやっていたら、それが会社の体質になり、諸所に悪癖が顔を出し、そのうち天に向かって唾を吐くという事態になりかねない。

世界最大の塗装機メーカーと日本の小企業の合弁会社に勤めていたことがある。ある時トヨタから合弁相手の塗装機を導入したいと話しがあった。

世界のトヨタだからメーカーもこれを歓迎して塗装機を含んだ大きな装置の設計図を渡した。設計図は作成するのにノウハウも必要だし、時間も掛る。機密事項も含まれている。だがメーカーはトヨタを信用した。

ところがトヨタはその設計図を元に日本のライバル会社の塗装機を取り付けた装置を下請けに作らせてしまった。メーカーはノウハウや機密事項を含んだ最新の設計図を作ったのにそれが無駄になってしまった。

メーカーの担当責任者は非常に腹を立て、もう今後俺が会社にいる間はトヨタとは一切取引をしないと宣言した。

トヨタが取り付けた塗装機は日本製で噴霧する塗料の霧の粒が大きい。これでは塗膜の滑らかさに欠ける。トヨタの意向は塗装機の部分だけ後でそのメーカーの物と交換すれば良いくらいに考えていた。

自分たちは大メーカーで、だれでも言うことを聞くと思ったのだろうが、アメリカ人のメンタリティは日本人とは違う。日本の小さな会社と合弁契約をするくらいだから、信用すれば会社の大小は気にしない。

トヨタは信用できない会社だと認定して、塗装機も一切売らなかった。それから10年ほどはトヨタの塗装は良くないと評判が立ち、車の販売台数は計画より大幅に減少した。トヨタは天に唾を吐いたのだ。

輸入仕入のことに関しては後述するが、嘘や騙し、裏切り行為は後々会社に危難をもたらすと覚悟をしておいた方が良い。会社の全てのことを明らかにする必要はないが、ビジネス契約をするに際しては隠した部分が大きな営業を及ぼすなら、その部分も隠してはいけない。

そんな場合は「そこは話せない」というのが正解だろう。仕入するにも相手の立場、状況を考え、誠心誠意努力するのがいずれ自分の方にも益をもたらすものだ。これには時間が掛るがそれは仕方がない。

振り返ってみれば10年などあっという間だ。嘘に塗り固められた10年と誠意を尽くした10年は会社の運命を大きく変えるだろう。

相手にも利益をもたらし、こちら側も適正な利益が確保できる商品を厳選して扱わなくてはならない。そうでなければ商品がいくら良くても扱わない方が良い。相手の利益が少な過ぎる時、時間を掛けて販売し、会社の柱になった時点で、相手はもう耐えきれずに大幅な値上げを要求することがある。

それでは客にも迷惑を掛ける。だから仕入れる価格が安すぎるのも良くない。アマゾンはヤマト運輸に運送を任していたが、送料が安すぎたのか事情は分からないが、ヤマトは契約を解除した。

これからアマゾンの送料はどうなるか。面白い劇が見られそうだ。自社で運送業務を行っているとは言っているが、さてどうだろうか。