輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

情報の与え方

情報はとても価値のあるものだ。業界の新しい動向も分かるし、大きく世界の動きも把握できる場合もある。新しい商品の発掘も情報が頼りである。しかし日本人はそんな貴重な情報に対して物と同等の価値を認めない。

情報を取得するのは業務であるが、その情報を売り込むとなると状況は一変する。税理士や公認会計士は毎月試算表を作り、税務申告書を作成提出する。これは一種の物だ。手許には試算表や申告書の控えが残る。そんなちっぽけな物でもそれを頼りに営業ができる。

コンピューターのシステムなども情報で、取引を始めるまで目に見える形がない。だから物がない。それをどのように顧客に利益をもたらすかを説明しても分かってもらえないことが多い。

どうすれば良いだろうか。

システムの形や効果を説明したパンフレットを作れば良いか。それとも納入実績の一覧表を渡すか。相手によって違うが、何か書いた物を渡した方が営業をある程度はし易くする。

経営コンサルタントも同様だろう。実際何をするか。どんな利益を相手は考えるか、しばらくは無料で作業をすることも必要かもしれない。その際には書いた物を上げれば良いだろう。

情報に対して支払うのを躊躇する会社も無料の情報は歓迎だ。情報を与える方としてもそれが商品を販売する手助けになるので、話しの中では情報を与えた方が良い。

但し話してはならないこともある。

それは自社の仕入先や売先など機密に関することである。しかし営業マンは話しが好きだし、営業の場では相手の話しを聞き、こちらも話さなければ営業活動にならない。

こんな場合はつい会社の機密に近い情報も漏らしてしまう。貴方の相手先の会社は貴方の会社と同じ仕事をしようと考えているかも知れない。そんな場合貴方が与えた情報は将来貴方のライバルになるかもしれない会社に利益をもたらすことになるかも知れないのだ。

輸入商品を売る場合は仕入先国を教えてはならないし、関税、通関手数料、手続きなどは担当ではないので分からないとくらい話しておけば良いのだが、知っていることはつい開示してしまう。

話してはいけないことと言えば他社の悪口、欠点など、あるいは相手の仕入れている商品に対する悪評価も駄目だ。自社の商品が他社のものに比較して如何に優れているかを説明したいのだろうが、違うやり方をしなければ駄目である。

相手は同じことを他社に行って話すだろうと想像するし、またそんな営業マンはその想像通りのことをするものだ。

ある人に聞いた話しだが、

その人が海外に出張した時に妻にちょっとしたダイヤモンドの指輪を買って来て上げた。相当奮発しただろうが、妻は嬉しくてその指輪のサイズ直しをある宝石店に依頼しようとした。

ところがその宝石店はそのダイヤモンドの品質が悪いと評価をしたのだ。妻は立腹して、時々小さい商品を買っていたその店とは取引を止めてしまった。

そこから類推できることは相手が仕入れている商品や機械装置、持ち物を褒めることだ。そうするとその時は買ってもらえないが、後々何かの折に少なくても相談が来る。

相手や相手の商品を褒めること。これがビジネスチャンスを生む。訪問した最初の日に取引が成立するのは好ましいが、商品によっては取引が成立するまで少し長い期間掛る場合もある。

そんな時は時々連絡することだ。

しかしそんな連絡を相手はいつでも受けているだろうし、ダイレクトメールはしょっちゅうくる。見ないで捨てられるケースが多い。

内容は商品説明ばかりで、実質売込みだ。メールを見る前に削除されてしまう。それよりは直接売買と関係がない有益な情報を盛り込むことをお勧めする。

今は情報が氾濫している。毎日毎日売込みのメールばかり、そんなのは絶対見ない。送る方も1万人に1人でも興味を持つ人がいれば良いというくらいの感覚だろうが、それは違う。

そんなメールばかり作成していると自分の実力が向上しない。相手が興味をもつような内容を如何にして書くかを考えていると、貴方の売り込み能力が増すこと間違いない。

情報は使い方によって生きもするし、死にもする。他と違う品質の高い情報を如何に探し、発信するか、ここが営業の成否の別れ道となろう。