輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

コミュニケーション術

学校での試験は質問に答えることである。逆に質問をするという試験はない。そうして誰もが学校を終え、社会に出て来る。だから営業の場において顧客の質問に答えることはできても、会話の中で質問をするのは得意という人は余りいない。

前にも書いたように顧客になってくれそうな候補の会社や個人と取引が実際に開始するには商品ではなく、先ず自分を売らなければいけない。

それにはどうするか具体的な方法を考えてみよう。

貴方が客である場合、売込みに来ている営業マンの感じが悪ければ取引は開始しないだろう。そう最初の印象が良くないといけないのだ。できれば派手ではないが、高給な服装を着た方が良い。だが客の劣等感を呷るようではだめだ。

1、さり気なく高級な営業マンと感じさせる服装が良い。

この点私はそのように見える服装をしていた人になかなかお目に掛かったことはない。しかし0ではない。その人は銀行の営業マンであった。多分今は相当の地位についていると思われるが、高級な背広にセンスの良いネクタイを締めていた。聞くと背広はお父さんが就職祝いに作ってくれたと言う。だからお父さんも相当高い教養の持ち主だったと想像する。

よれよれの背広にだらしなく曲がったセンスの悪いネクタイを締めた営業マンなどいないと思うのだが、それを逆から見れば良い。貴方が就職試験を受けに行っても同じことが起こるものだ。

私はこの銀行の営業マンを見た時思った。子供たちが成人して就職試験を受けるときに高級な背広を誂えて上げよう。そしてそれを実行した。二人の息子たちは有名大学を卒業したのではなかったし、頭も良くはなかった。だが入社試験の全てに合格した。

2、それから初対面の挨拶になる。

その時に使う言葉も相手が受ける印象に大きく影響する。「・・・になります」「・・・してもらっても良いでしょうか」。こんな言葉は文法的に全ておかしい。正式には「・・・でございます」「・・・して頂けませんでしょうか」だ。「なる」とは何かが変化する時に使う言葉で、「良いでしょうか」は自分の行動などの了承を相手から取ることだ。「「商品の説明をさせてもらって良いでしょうか」は正しい。

言葉を聞くと大体その営業マンの知能程度が分かる。間違った言葉を連発する営業マンには何か理由を付けて、できるだけ早く帰って頂く。

貴方は相手の先生にならなければならない。即ち営業マンとして相手に情報を与えなければならないのだ。しかしそれは後回しだ。何とかきっかけを作って相手に話させる。これが大切だ。話すより聞く。こんな態度で臨まなくてはならないだろう。

3、相手の会社の仕入担当は多分話し好きだ。

自分自身の自慢、子供の自慢、卒業した大学の自慢、ゴルフの腕、趣味、あるいは友達の自慢、自分が会社で何をやったか、なんでも話したい。

その中にはこちらに取って大切な情報になることも多く、相手は話すことで気持ちの満足を得ることができる。しかし貴方は自社の商品を売りたい。でも我慢しよう。相手にできるだけ話させた後になってやっと商品の説明をできる機会がやってくる。それは一時間後かも知れないし、15分かも知れない。

私が営業している時、一番多い話題はゴルフのことだった。自慢ばかりではない。失敗したショット、ブービー賞を取ってしまったこと。帰りが車なのに飲んで高額の反則金を払わされたことなどをとうとうと話す。

私はゴルフをやらない。しかし知識は持っている。タイガーウッズのショットの特徴、獲得賞金額、古いところではジャックニコラスのことや、肩などを痛める打法。時々テレビで見ては覚えておいた。

飲食店でアルバイトしている時、障害者の人が客で来ていた。もちろんその人は自分に劣等感を持っている。こんな場合、相手はなかなか話しをしない。ただ黙々と食事をするだけだ。

箸ではなく、スプーンで食べるのを知っていたから、その人が来るとスプーンを出し、ちょっとだけ、何か話した。それでもその人は聞いているだけ。でもそのうち一言何か喋った。発音が明瞭ではないので、聞きにくいが何とか話している内容を理解して、私も何か話した。これでコミュニケーションが始まり、毎日私が勤めている食堂に食べに来て、大笑いをして帰るようになった。その人は毎日くるから他の食堂へは行かないのだろう。私の営業は成功したのだ。いや、それ以上だろう。私を良い人として見て、会うのを楽しみにしてくれた。

大概の人は話しをするのが好きなのだが、こんな人もいるのだ。だから相手の好みを見極め、その人が好きな会話状態を構築しなければならない。

この前もあるマンションの管理組合の理事長と話した。

その人は有能な人で、もう40年以上そのマンションの理事長をしている。その中であった出来事、困ったこと、今からの計画などを3時間話し、私は商品の説明をする時間が10分もなかった。それでも買ってくれそうな気配だ。