輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

輸入における、保険について

これらの不慮の事故に備えるため、運送保険を掛けておくのが良いだろう。ケースごと紛失すると運送業者が運送業務を真っ当しなかったということで紛失した分の金額を弁償してくれるが、中身が抜き取られるとその対象にはならない。 貨物を受け取った時、既にそんな状態だったと判断されるためだ。

そんな損害を補填するのが運送保険だ。保険料(これをpremiumと言う)はたいして金額ではないので、この保険を掛けるように心掛けたい。

保険対象金額(これをinsured amountと言う)はある程度の幅で話し合いをして自由に設定できる。その商品を販売した時の利益やそれまで掛かった手数なども補填する目的がある。

一般的には商品代金と運送料の合計に対して10%を加算したものとされるが、私の場合は30%を加算して保険を掛けていた。これは利益分を補填する目的があった。

運送料で注意しなければならないのはアメリカなど大きな国土を持つ国からの輸入の場合だ。内陸部から飛行場や港(これらを船積港と言う)までの運送料(これを横持ち費用=inland freightと言う)だ。この費用は結構金額が嵩むので、これも保険金額、premium に加算すべきだ。

商品の運送に関して相手側と話し合わなければならないことの一つにこの横持費用がある。アメリカの場合相手は多分商品を保管してある倉庫あるいは商品が生産される工場での引き渡しにして欲しいと要求するだろう。そうすると横持費用はこちら持ちになる。

理由は横持費用を商品代金に組み込むと計算がややこしくなったり、船積み港が変ったりすると商品代金が違ったものになるからだ。この商品引き渡し場所の契約はex go down と称される。

それに対して船積港渡しの契約はFOB(Free on Board)と言う。日本の港や空港渡しという契約も理論的には存在するが、慣例としては極めて少ない。

商品の所有権は引き渡されたところでこちらに移転するので、そこから何等かの事故が発生した場合は輸入者が処理をしなければならない。万一の損害に備えて保険契約をこの時点で輸入者がしておく必要がある。

損害が発生して保険会社や運送会社に損害額を支払ってもらうにはその事故の証明をしなければならない。それは運送会社が貨物の到着を待って行ってくれる。これは頼まなくてもやってくれるので、その報告を待つ。

その報告がなければ一応貨物は無事到着したと考えて良いが、輸入者の指定する場所に到着して初めて判明する場合もあり、検品はきっちりとする。そこで損害の発生を知るとこちらから保険会社に連絡する。保険会社は人を派遣して検品するが、信用されているとこの手続きは省略されるだろう。

さて商品が輸入港に入港(空港も含む)してからもやはり国内の運送をしなければならない。

これは事前に準備をしておくのだが、ここでもやはり横持費用すなわち国内運送料が発生する。

商品が自社の指定する倉庫に搬入するまで掛かる費用は輸出者の出荷場所から船積港からの国内輸送、輸入運送料、関税、通関諸費用、日本国内の横持費用、保険料である。

輸入仕入に関しては商品代金の合計にこれら諸費用の合計を加えたものが、輸入原価になる。従って商品原単価(一つの商品に対する原価)は輸入原価/商品数と計算される。

種々の商品が輸入される場合は商品の価格に対して案分することになるだろう。計算方式としては輸入原価/商品代金総額xその商品の単価である。

輸入仕入の場合、商品原単価は商品単価とは大きく違う。それを見過ごして商品を輸入した輸入未経験の会社があった。その会社は輸入費用と商品単価に加えなかったので、輸入販売する度に損が出たと嘆いた。

輸入は複雑な行程を要する作業である。英語によるコミュニケーションから始まって、輸入運送会社を探し、通関会社と交渉して、国内運送会社とも話し合いをしなければならない。安易に手を出すと大きな損害を被るものだ。

一つ注意しなければならないのは、ケースの中に入っている納品書(invoice)や貨物明細(packing list)を抜き忘れないことだ。

前述の会社は我が社から商品を買っていたが、それら書類を我が社が抜き忘れたためにこちらからの販売単価が高すぎると誤解したために発生した笑い話だ。

笑い話で済めば良いのだが、案外大きいトラブルに発生する場合がある。一度逆のケースで我が社が仕入した商品のケースにこれら書類が残されていたことがあった。

私は輸入の専門家で、それらの商品から仕入先、国、単価その他全てを知ってしまった。だからその商品を直接輸入しようと思えば簡単にできてしまうことになった。