輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

人事が一番難しい

会社は経験上一人で運営するには限界がある。社長はスーパーマンでなければならないと言ったり、一人ではやれないと言ったり矛盾するようであるが、これは事実だ。 

何でも一人でやる気概を持ってことに当たらなければ会社は運営できないのは事実ではあるが、全ての作業を自分一人ではこなせない。時間的な制限もあるが、そんなことをやっていたのでは社長だけができる肝心の仕事が疎かになるだろう。

 

だからどこかの時点で一緒にやってくれる社員が必要になる。

この社員をどのように遇するか、将来、初期の社員が重要なポストを得るくらいの能力、人柄を備えているか。

この辺が必ず問題化する。私は最初に会社を始めて3年、サラリーマン時代の部下を社員として雇った。彼は会社の株も所有したいと願ったので、それも一部渡した。

この人物には経理事務を担当してもらったが、能力が低かった。会社が大きくなるに従って「この会社の経理は複雑だから経理事務は私を含めて3人必要だ」と既にもう一人経理事務の補助をしている女子社員がいたが、それでも間に合わないと訴えた。

後で優秀な女性経理担当を入社させたら、その人は一人で経理をこなした。まだシステムがない時代だ。

この人の給料は60万円でボーナスも2ヶ月くらい払っていた。それでも足りないと言う。理由は息子を大学にやるのに貯金をしなければならないので、あと10万円給料を欲しいと要求するのだ。

これらの金額を今のレートに換算すると多分この人の年収は1000万円を越えていたと計算できる。それでも足りないと言うのだ。それで私はその金額に見合う仕事をしてくれと要求するとそれはできないと反論された。

結局その人は辞めていったが、これで分るように社員の自己評価は会社の評価とは違う。私は彼に支払っている金額が多すぎると考えていたが、彼の自己評価は違った。リスクを取って零細企業に入社したという事実(これは事実だろう)を踏まえて、そんな自己評価をしたと思う。

私はどの社員も公正に評価してつもりであるが、社員、特に男性の営業マンはそんな評価でも納得しない。会社の組織を背景に仕事をしているのを忘れ、営業成績だけで自己評価する。

私もサラリーマン時代を過ごしたがサラリーマンは他人の評価を甘んじて受け入れる能力というか度量が必要である。それができないとその人の精神は不平、不満で一杯になる。

 

酒場でのサラリーマンの会話を聞いていると大概が人事に関する愚痴だ。

しかし会社を経営するようになってから、多分会社は正当に評価してそんな人事を行っていると思うようになった。

もちろんそうでない会社も多い。まるで愛人のような女性を会社に置いて他の社員より高い地位に付け、高給を支払っている例も聞く。

しかしサラリーマン側からするとそんなことも無視するようにすることが大切である。そんなことは他人ごと。自分には関わりがないと割り切らないとやっていきない。

そんな会社からは転職すべきなのだが、日本の社会は転職を容易に受け入れない。だからサラリーマンは自分の仕事に邁進し、会社の方針(間違っているように見えるとしても)の沿った人事、給料査定を甘んじて受けなければならないのだ。

しかしこれでは仕事に熱情が入らないのは無理からぬことだ。会社は社員を公正に評価し、待遇や職務を考えなければならないのだ。

 

私の方針は「年に1,2度家族で温泉旅行ができ、ある程度の貯金もできる以上」の収入をもたらすことだった。

それは達成できたが、それでも男性社員は不満を鳴らす。全ての事業を発掘し、発展させたのは社長たる私自身だったので、営業マンは最初から事業、資金、事務員、在庫など充実している状態から営業を始めているのだが、それは考えない。

自分の上げた数字だけを見て、給料が低すぎると文句を言うし、同僚の社員とのボーナスの比較をして、不平を鳴らす。

ある程度会社が発展すると一番頭を悩ますのが社員の扱いである。このことはあとで詳細に検討するが、会社は全ての社員が公正に処遇されていると思わせることは不可能なのだ。しかし考えなければならない。社長はこの点でも孤独なのだ。