輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

創業とはどういうことか

起業したてのころ

創業と起業は違う。創業とは何もないところから企業を立ち上げることで、起業は既に会社が存在していても新しいビジネスを始めることだ。

自分一人で登記もせずビジネスを始めることもできる。しかし歌手には舞台が必要なのに、これでは舞台の無い歌手で、大道芸人扱いされてしまうかも知れない。

どんな仕事が難しいと言ってもこの創業ほど難しい仕事はないだろう。普通会社に勤めていると、それなりに体勢が整っていて、それを土台にして仕事を進めることができる。言わば仕事の半分はすでに達成されていると考えて良い。

仕入をする資金はあるだろうし、すでに在庫として販売する商品は準備されている。新しい商品を発見したい場合は、仕入係に任せることもできるし、もし仕入係がいなければ、自ら海外に行ってでも発見できる。出張旅費は会社持ちだ。

税務申告は経理担当が税理士などと協力して行うだろうし、書類の作成も事務処理係が在籍しているだろう。

会社の方針や将来の展望は社長の仕事で万一係争が起これば弁護士が裁判で解決してくれるかも知れない。

 

会社には全てが整っている。

会社が大きくなればなるほど、自分のカバー範囲は狭く、熟練度も高くなる。舞台の全ては完備していて、自分はその舞台の上で演技をするだけだ。

創業するとそうはいかない。会社でやらなければならないことを全て自分が行うか、社員を雇わなければならない。社員を雇えば金が掛かる、良い社員を雇用するのは極めて難しい。その金は誰が作るのか。自分しかない。創業というのは孤立無援という状態からの出発である。

そこには何が必要だろうか。

先ず資金が必要だ。資金は誰かに出してもらうか、自分が貯蓄した金を当てなければならない。商品の仕入れ代金は当座や運転資金の一部は事業の正当性が認められれば、政府が貸してくれることもある。

しかし生活費はどうすれば良いのか。

親元に住んでいる人は生活費が最低限で済むだろうが、一人住まいの人は食費や、光熱費、家賃、その他全て自分で調達しなければならない。多分最低でも20万円程度掛ると覚悟しなければならない。

これが何年続くだろうか。

実力のある人は3年くらいで創業した会社を黒字にできる。そうすると20万x3x12=720万円という資金が創業時の生活費と考えて良いだろう。しかし全く売上がない訳ではないだろうから、徐々に売上が増えて3年で黒字になるとすればその半分、即ち360万円くらいと計算できる。

政府が貸してくれる資金は大体300万円と見積もれば大きな狂いはないだろう。この中から商品の仕入、あるいは事業に必要な経費、交通費、事務所の賃貸料、通信費、事務用品費、税務申告料、登記費用、什器備品代、コンピューター関連費用、などもろもろ掛る。

それらを合計すると政府からの借り入れを除外すると、まあ最低でも500万円程度は必要と見なさなければならない。少し余裕をみれば創業をして黒字になるまで、500万円から1000万円くらいの操業費が必要になると見積もらなければならない。

 

とにかく3~5年は相当な貧乏暮らしを強いられる。

できるだけ家賃の少ないアパートでも借りなければならないし、まともな昼食などは取れる訳がない。コーヒー代にも事欠くだろうし、まともな服は着ることができない。悲惨で長期な苦難の時代が待っている。
そう考えると親元で暮らし、食費など諸々の費用を親が負担してくれている間に起業することをおすすめする。