輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

商習慣の違い、とくに宗教問題は‥

仕入は国内だけではなく、海外からもすることがある。最近はグローバリズムや国際化の名の元にその傾向が強くなった。海外から仕入れることを輸入と言う。

これを行うには熟練した技術を要するが、それも慣れると難しくはない。一番注意しなければならない件は商習慣、民族性、使用する言語、宗教問題、などの違いである。これは順を追って説明しなければならない。

宗教問題はその中でも最たるものであろう。

ヨーロッパ各国は大体キリスト教、中東、アジアの多くの国ではイスラム教、タイ・スリランカ・カンボジア・ラオス・ブータン、台湾・ベトナムなどアジアの他の地域では仏教を信じて人の割合が多い。

宗教は人の精神に大きい影響を及ぼす。現在そんな宗教を信仰していないとしても長年に亘る信仰が考え方、風習などに影響を及ぼしてきた。海外の人との取引はそんなことも考えなくてはならない。

それぞれの宗教の説くところを簡単に一言で言い表すのは簡単ではないが、敢えてそれをすると、キリスト教は正直、イスラム教は相互扶助、仏教は宥恕(許す大きな気持ち)である。

それが全ての人に当てはまるとは思えないが、キリスト教を信じている人が多い国では嘘は付かない。イスラム教は人を助けるあるいは助けて貰う。仏教では多少の嘘は許してもらえるとなるだろうか。

それぞれ長所短所があるが、敢えてそれを説明するとキリスト教では嘘は付かないが我儘、イスラム教は助けてもらえるが簡単に頼ってくる。仏教は優しいが嘘、はったりが多い。

最低限こんなことを念頭に置いて取引をすることだ。過去の経験ではキリスト教の人との取引が一番トラブルは少なかった。そういう意味で経済が早くから発展したとも思える。

日本人や他の仏教国はキリスト教の人たちから見ると嘘、はったり、隠し事が多いと思われているので、注意しなければならない。イスラム教の人とは個人的な付き合い以外、あまり取引をしたことがないが、どうもすぐにそれも簡単に助けを求めるような気がする。もちろんそんなことは全体像で個々の人に当てはめることはできないだろう。

アメリカは歴史の短い国だから独得の文化はあまり見られないが、ビジネスでは一番の先進国である。大きな国土を有するが故に自己の権利を主張しないと生活をする上で支障が起こった背景がある。これがビジネスをする上でも顔を出す。

人は全て自分を基準に物を考える。努力してそれから脱却しようとしてもなかなか上手くいかないものだ。大体のアメリカ人は嘘を付かないし、取引相手も嘘を付かないと思っている。この国では嘘は大きな罪悪として扱う。

だから仕入をするに当たって日本側に嘘、はったり、隠し事などがあると相手はとても困るし、裏切られたと感じるだろう。もし相手の質問に答えたくない場合は「それは社外秘」であるとか「言いたくない」などはっきりと表明するのが賢明である。

販売予定数量に関する質問では「100から1000であるが、予想が付き難い」あるいは「最大限の努力をするが、販売を開始しないと答えられない」と嘘やはったりなどではないことを明言するようにしたい。もちろん力関係によるが、取引を決定するような重要な質問に関しては「答えたくはない」などは通用しないだろうが、基本は嘘を付かないということである。

彼らはエゴイストである。そうでなくても自分の要求をはっきりと言う。こちらもそれに対して遠慮をせずに要求事項は明確に示すのが良い。遠慮をして少し条件を緩めるとそれが要求事項だと勘違いして、そこから交渉が始まって結局不利な条件で取引をすることが多い。

取引の場で使われる言語は主として英語である。日本は長年鎖国をしていたし、現在の学校教育も読み書きが中心である。従って英語での会話は苦手で、言いたいことを充分伝えることが困難な人が多い。

これは改善が困難な問題である。英会話が上達しても相手は母国語であるとどうしても交渉が不利になる。ゆっくりと話し、相手の言っていることが理解できない時は「もう一度言って欲しい」と頼まなければならない。

こちらが買い手の場合は、英語を話すのは相手に対するサービスであるし、相手が日本語を話せないのは相手の義務違反である。だからできるだけ自分の要求事項は相手が完全に理解するまで繰り返し述べるようにしたい。