輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

会社の経理は複式簿記

経理関係の仕事には、財務、税務、それに経営資料の提示という複数の目的がある。税務が経理の役目だと考える人も多いが、これは会社としては副次的で政府の要請により会社がサービスをしていると考えるのが妥当だ。 

営業や仕入業務と違ってミスは小さくても大きな問題を引き起こすことがあるので、緻密で辛抱強く、それに作業が早い人がこの業務に携わることが多い。

毎日、営業、仕入、債権の発生、債務の弁済、資産の変動などに関して種々の作業を滞りなく行う必要がある。その基礎になるのが振替伝票だ。この伝票を起票する(これを簿記という)のは難しくないが、初心者は少し戸惑うことがある。この勉強のため学校に通いあるいは高校や大学で修練する人が多い。

振替伝票の起票は本来難しくない作業である。

資産や負債が異動する時に起票するだけだ。資産や負債が増加、減少、変形する場合を異動と考える。資産は積極財産、負債は消極財産と呼ぶことがある。積極財産は異動(例えば売ったり、買ったりする行為)により現金が減少する事物、消極財産は行為により現金が減少する事物である。

預金とは現金を金融機関に預けてある現金のことで、所有権は会社にある。大きな額の現金と取り扱いは危険であるので、預金を現金代わりに処理すると便利なので、現預金と言ったりする。しかし預金も現金に変わりない。

資産とは会社の所有する換金可能な物品や権利で、負債とは最終的に現金が減少する義務である。

資産とは会社所有の不動産、商品、定期預金、売掛金、車両、などの財産で、これらは会社の意思があれば現金に形を変えることが可能なものだ。また負債とは買掛金、借入金、預かり物、など最終的には現金が減るものを言う。

資産、負債の増減は現金や預金、資産の減増という反作用が発生する。その本作用と反作用の両面から処理するのを複式と言い、本作用だけを記帳するのを単式と言う。

経理的には複式簿記、単式簿記と称し、会社では必ず複式簿記を採用しているししなければならない。家計簿は使ったお金だけを書いておくので単式簿記である。不思議なのは極めて複雑、大規模な資産、負債を表記しなければならないのに、国の会計が単式簿記によっている。これは大きな経理処理の欠点である。

こうして経理処理をして総合、統合すると結果として貸借対照表、損益計算者が出来上がる。貸借対照表は現状の会社の財産、負債の一覧表で、損益計算者は利益の計算書である。

例えば会社の業務で電車やタクシーに乗ると現金を支払わなくてはならない。この行為によって現金という会社の資産が減少する。もし会社と個人の契約で交通費は個人持ちということであれば会社の現金が減少するわけではないので、この行為は振替伝票を起票する行為とはならない。

会社のどんな行為も前述の資産、負債の増減、変化がなければ振替伝票起票の原因行為ではない。例えば営業マンが応接間で顧客の担当者と会議をしても会社の資産、負債の増減はないので、振替伝票を起票する行為ではない。

会社の預金通帳かキャッシュカードを使って10万円を出金すれば普通預金が減少して現金が増加する。これは振替伝票の起票原因行為である。

仕入先から商品を預かった場合、所有権が移転しないのでこれは会社の資産の増加にはならない。ただ預かっただけで、相手が要求したり、会社の置く場所が無くなったりすると返還する。だからこれらの商品は資産の増加ではない。振替伝票も起票しない。

商品を売れば商品という資産が減少し、売掛金という資産が増加する。これは伝票起票原因行為である。その売掛金が月末に銀行に振り込まれれば、銀行預金が増加し、売掛金が減少する。資産の増加という本作用と資産の減少が反作用という現象が出現する。

商品を売った場合、販売代金は商品が減少した金額より大きい。これが利益である。従って販売代金である売掛金は商品の減少額と利益を合算した額である。3つの資産、負債の増減が関与して、売掛金=商品+利益という簡単な算数が成立する。

だから営業行為とは売掛金と出荷する商品の差額を求める行為と言える。その差額が多い場合、利益を多くなり会社の業績が向上する。