輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

購買心裡

人が物やサービスを買う動機は何だろうか。それを考察すると営業は如何にあるべきか反対から理解できる。大きい会社ではこのようなことを絶えず考察するスタッフがいると思うが、的に当たっている時とそうでない場合がある。

会社が物やサービスを買うのは基本的には生産性の向上であろう。機械を導入すると生産がスピードアップして人力に頼るより生産性が格段に向上する。

最近は新たな問題も発生した。それは人手不足である。手作業でやっていた生産が人手不足のためやれない。あるいは一つの生産ラインを止めなければならない。そのような事態が発生している。

中には一つの店舗を閉鎖しなければならない事態も発生する。こんな時は店の入り口近くに券売機を置き、客に支払いを先にさせる。この方法によって少しは店員の作業量を少なくして店員の確保の難しさを補う。もし人手不足を解消するような画期的な機械が発明されれば飛ぶように売れるであろう。

しかし個人の客の発想は全く違う。

ブランド力がある、雑誌やテレビで大々的に取り上げられていた、値段が高い、あるいは安い、買うのに面倒がない、誰でもが愛用している。宣伝している。などなど品質と価格の相関関係で物やサービスを購入することは少ない。

だが同一商品が長く出回るようになると買う人も研究し、コストパフォーマンスや利用価値、デザインが良い物など本当の価値を考えるようになる。それでも前記のような間違った価値判断が気持ちの中に残っているのだ。

一時流行ったブランド商品などはその一例である。

ルイビトンの最初のモデルなどデザインが本当に良いとは思えないが、古くからヨーロッパでは貴族たちが使っていたという事実を上手く宣伝して非常に沢山売れた。

一般の会社員が持つには身分不相応な高価な物を欲しがり、60万あるいは120万円もするようなバッグを買う。これは自己満足を考えての行動ではないだろう。

自分は買う力がある。あるいはそのようなステータスを持っている。そんな精神的な衝動がこのように商品を買わせるのだ。こんなことをするのは比較的低収入の人に多い。中には収入がない高校生が親にねだって買うこともあるようだ。

高収入の人は違う。品質の良い物を見極める目を持っている。だが買いに行くのが面倒だ。ネットで注文するのもややこしく手間を掛けたくない、あるいはアフターサービスを依頼するのも電話一本で可能だ。など兎に角面倒なことを嫌がる。

クリーニングに出す衣料品を取りに来て、出来上がったら届けてくれる。痒い所に手が届くようなサービスをすると支払い金額が高いことなどを無視してその店だけと取引するということも多い。

価格について中途半端は良くない。

飲食店でもディナーが一人3万円もするよう店が大流行りすることもよく聞く。そんな店の味は一人1万円のレストランと大差はない。これは中途半端な人の見栄張りたい結果である。

あるいは味の割に値段がとても安い。これは正当だが、その店がブランドとして有名になるとだんだん値段が高くなっても客は来るだろう。

会社でも大会社のように資金が乏しい中小企業の経営者は大きな初期資金が発生しないような物やサービスを買うだろう。ここにリース事業が成り立つ要因があるのだ。

リースが終わりかけると次の新しいモデルを紹介して、今までのリース料金と同額の支払いで済みますなど言うが、この説明は騙しである。ためしにリース料の総合計を計算してみれば良く分かる。

個人はコストパフォーマンスを考えないし、中小企業では一時的な資金の流失を嫌う。大会社では担当者が働きたくない。そんな中で営業マンは相手がどのタイプの顧客候補かを考えて営業活動をするのが良いだろう。

但し基本的には人は物やサービスを買いたいのだ。言葉を変えるとお金を使いたいのだ。

貴方も一週間お金を使わない生活をしてみるといい。自分が貧しくなったように感じ精神が荒廃する。人の頭脳は発達し過ぎたので、お金を使うことで頭脳を使用したいのだ。営業はそんな人間の根本精神(もちろん個々の人で方式は違うが)を考慮に入れてその人が受け入れやすい営業方法を考案するのが良い。

だから物を考えなくてはならないのだ。

記憶はどのような営業をすれば良いのか、個々の人の精神状態を把握するには不足である。売込みを掛けたり、商品構成を変えたり、話題を作ったり、人の弱点や好みを分析して考慮して当たれば成果は向上するだろう。