輸入貿易会社、社長の仕事術

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資産科目、現金の歴史


現金はその国が支払いを保証する証明書のようなもので、日本円などは保証力が強いから安心である。しかし南米や南北朝鮮のように通貨(現金)の物品やサービスに対する実質交換率(購買力平価という)が極端に低下する場合は注意が必要でそのような通貨は持っていても価値がない場合が多い。

 一般にインフレであればその交換率は低下し、デフレであれば交換率は上昇する。インフレが酷い時は1年で実質交換率が半分や極端な場合は1/10になってしまう時がある。

かつては日本でも、戦争前と戦争後ではこの交換率は1/120に下落してしまった。即ち戦前の1アメリカドルは3日本円で交換されたが、戦後は1アメリカドルを取得するには360日本円をようするようになった。実質交換比率を購買課平価というが、現在はそれが戦後の復興によって回復し、現在のレートは1アメリカドルに対して107日本円程度だ。

自国の購買力平価だけで国際的な実質価値は図りにくので、他国の通貨と比較する方法が一般には取られる。現在主要国の通貨の交換レートは変動的で、相場によるレートが実際の交換の時には適用される。この仕組みを変動相場制と称する。

しかしアフリカや南米の通貨購買力平価は大きく下落することがあるので、そんな国の通貨の交換価値が計りにくい。そこで信用力があるアメリカドル、ユーロそれに日本円が基準通貨とされ、自国通貨と基準通貨との交換レートがその通貨の価値と見なされている。

政治圧力で中国元も基準通貨とされているが、誰も信用しないので実質的には基準通貨ではない。基準通貨との交換レートが大幅に下落することを暴落と言ったりするが、韓国ウォンも最近暴落し、IⅯFが中に立って救済した。

こういうことは自国の信用を落とす。信用が落ちた国の通貨を輸出した商品の代金に当てることはない。だから輸出代金は基準通貨で受け取るのが通例になっている。

しかし国策的に敢えて相手国通貨で受け取る場合もある。例えばロシアは石油を輸出する時に、蒙古の通貨トゥグルグで受け取ることがあるかも知れない。しかしこのような特別の国策がない場合、一般的には輸出商品の支払いにはもっとも力があるアメリカドルが使用される。

アジアでは日本円が多く流通しているので、日本円の信用力が高い。だから輸出代金は日本円で支払われることも多い。

物品を製造するには原材料や人手が掛かる。人に対する賃金はその国の通貨で支払われることがほとんどであるが、原材料は輸入するケースも多い。

しかし日本では日本円以外は基本的には流通していないので、商品は日本円で売買される。それが例えばアメリカに輸出されると受取りはアメリカドルでされる。もし日本円のアメリカドルとの交換レートが低ければ、アメリカに取ってその商品は安い。だから日本円のレートが低いと輸出し易くなる。

本来は自国の通貨の価値が高いと多くの商品を買うことができ、信用力があると言えるのだが、輸出が多い国では自国の通貨の基準通貨との交換レートが低いほど輸入国側からすればその商品が安いということになり、輸出がし易い。自国の通貨を実質の価値より国策で低くすることを為替操作と言い、その国は為替操作国とされ嫌われる。

逆に自国の通貨が大幅に下落するとマイナス面が大きく、従ってその国の政府は自国通貨を防衛する意味でレートを高く保つ政策を取ることもある。弱小通貨にはこういうことがしばしばあり、要注意である。中国の人民元はそのような操作をされているという噂がある。

現金(通貨)は物やサービスを買う手段、道具である。ところが国際化が進んできて金融機関を媒介としてどの国の通貨も買うことが可能になった。

これを為替取引と称しているが、相手国の通貨を買い、買うのに使った通貨に対してのレートが上昇すると利益が出る。こんな取引をFⅩと言うが、そうなると通貨は物品などを買う手段を超えて単なる商品になってしまう。

こんな取引はあってはならないことだと思われるが、この通貨の利用法は物品などの売買に使用されている量をはるかに超えている。この制度は金を多く持っている人、団体に富が偏在する。

最近このような金で金を買うような類の経済が横行していずれ修正しなければならない事態が訪れると思われる。しかしいずれにしても現金は会社の一番重要な資産であることには間違いがない。