輸入貿易会社、社長の仕事術

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預金の仕組み

金融機関に管理を委託した自分の現金であるが、預託している間は金融機関に占有権が発生している。所有権とは自分のものであるという意味で、占有権とはその資産が管理下にあるという状態を表す。

このように極めて流動的な資産が占有されているということは占有させている相手に信用がない場合、その資産が消滅する可能性が発生する。もし現金を海外の取り引き先に預ける場合を考えれば分る。

しかし銀行に現金を預けるということは反対に安全を買うということにもなる。大きな現金を家に置いておくと窃盗、強盗の被害に会うことも考えられ、決して安全ではない。

そういう意味では預金は経理的には現金に近い資産と言えよう。そして預金を持ち、その返還を要求して現金を手元に戻す行為は会社経営や生活上の日々の行動である。

そのため政府は銀行法という法律を定め、預金の安全性を確保させている。そして頻繁に行われるこの行為を便利にするため、銀行や金融機関は種々の方法で預金の現金化の利便性を高めているのだ。その一つがキャッシュカードである。

しかし金融機関が倒産すると勿論この現金は返ってこない。占有権を与えるという行為は安全ではないことの現実的な証拠である。

かつて多くの銀行が倒産した。銀行が占有している客の現金を利用、使用して企業や個人に金を貸したり、投資に回したりする時に発生する。融資した金額が極端に大きい、投資額が巨大過ぎる。そのような場合が多い。最近でも足利銀行が倒産したし、もう少し前は都市銀行だった北海道拓殖銀行も破綻した。

政府は金融機関の破綻が国民生活に甚大な被害をもたらすということを防ぐため、1000万円までの預金に対しては政府が保証する制度を作った。

但し金利が付かない決済手段である当座預金などで全額保証される預金があるので、個人でも個人事業主になって当座預金を開設すれば全額保証される。

だがこんな手間を掛けるより、破綻する可能性が低い銀行に預金をするのが手っ取り早い。三菱UFJ銀行、JAバンク、ゆうちょ銀行などは破綻、倒産の可能性が極めて低いと言えよう。

銀行が預金を受けると債務が発生する。それに対して企業に対する融資は債権の発生要因である。その債権が不良化して債務残高を超すと基本的には全ての債務を弁済できなくなる。しかし金融機関には借入能力があり、あるいは国家が国民生活のことを考え、金融機関に貸し付けを行うなどの手段で救済することも多い。

そんな場合、金融機関は破綻を一時免れるが、単に一時的かも知れない。体質を考慮するといつ破綻してもおかしくなるかしれたものではない。

現在ドイツ最大手のドイツ銀行はデリバティブという債権を7000兆円有している。そしてそれが回収不能になる可能性がある。そうすればどういうことになるだろうか。7000兆円と言えば日本の借金1100兆円の7倍近い。それをただ一行が保有しているのだ。

勿論ドイツ銀行は破綻の可能性が高い。どの程度の負債(預金)を有しているか分からないが、預金者に損害が降りかかるのは間違いがないだろう。

銀行が破綻する理由はもっとある。政治家の失言だ。もともと銀行は預かった預金以上の貸し出しをしている。簡単な例で言うと1000万円の預金を貴方がする。その後1000万円の融資をすると、貴方は預金を引き出せない。銀行には金がないからだ。
を だが多くの預金者がいて、その人たちが全員が預金を一度に全額の解約を申し出るということは通常ないので、個々の預金の引き出しは問題なく行われる。

だが政治家の失言や風評で預金者の多くが預金を引き出すと銀行は応じられない。これを取り付け騒ぎと言う。これで破綻した銀行は日本に限らず世界各国にある。

またコンピューター技術の発達により、ハッキング行為が横行して自分の預金が盗まれるという事態も発生する。そうすると金融機関がそれを自己責任として保証してくれるという確約は必ずしもない。

現実にこういう犯罪が発生した。日本でも50億円あまりがコンピューターを通じて他に送金され預金がなくなったことがあったし、もっと大きな金額がハッキングで抜き取られる事件が海外で発生している。北朝鮮の仕業ではないかとの噂があり、預金は必ずしも安全が確保された資産ではないことを認識しなければならない。

大量の現金を持ち運ぶリスクと比較すると預金が無くなってしまうというリスクは極めて少ないが、それでもリスクは付き物であることは忘れてはならない。

また預金通帳の保管者が突然死亡すると預金があったことさえ保管者以外知らないケースは案外起こり得る。このような隠れ預金は銀行に多額に残っており、こんなことが現実に多く発生していることを示している。大昔の銅剣が大量に見つかるのは管理者がそのことを他の人に言わなかったからである。これとよく似た現象だ。