輸入貿易会社、社長の仕事術

経営46年の経験・知恵が詰まった集大成ブログ

負債に関する留意点

前項までで負債を増加させると資金繰りが良くなると述べた。だが問題点がある。前項でも述べた通り、負債は必ず解消、すなわち減少させなければならない。

負債が多いと減少させる資金も多く必要である。だから多すぎる負債は会社の状態が悪いということと繋がる。例えば借入金が年の売上高の半分以上ある会社の状態は改善すべきだと考えられる。

また短期借入金が多ければ減少させる期間も短く、資金繰りに掛る時間、手間が多くなるのは自明の理だ。会社が優良であれば金融機関から長期で借入できる。だからこの負債は会社の経営状態を把握するのに役立つ。

純資産

利益が積み重なったものを利益準備金と言う。これは会社の動かない財産と考えて良い。これは負債とは違い減少させる必要がないし、資金繰りに寄与する。多ければ多いほど会社の状態が良いのだ。

資本金も負債であるが、これは不動であるので、会社が安定する材料になる。ただ資本金に対しては配当をしなければならない。であるから多すぎる資本金は過大資本と言うこともできる。

配当を行うと余剰金が減少する。結果余った金額が余剰金となる。これら資本金、利益準備金、余剰金は純資産と称され一般の資産とは区別される。簿記の仕組み上貸借対照表では負債と同じ貸方勘定(後述する)である。

会社の目的はこの純資産を増加させることだと断言して差支えがない。資産を増加させることにより営業を行い、負債を増加させることにより資金を調達して株主に配当をした後、この純資産が増加する。これが概略会社の活動模様だ。

純資産が多ければ多いほど会社の状態が良好なので、株主は安心するのでこれらは株主資本とも称される。会社の状態が良好なら金融機関からの借入も容易になるし、借入なども必要がなくなことも多い。

しかしこの純資産は全て現金や預金の形で残存しているのではない。資本、負債などの総合計算により出された計算結果だ。例えば純資産の全額が機械という資産に形を変えているとも言える。だから純資産が多いから会社の状態が良好であるとは言えない場合もある。純資産が多く、現金、預金が多ければ、それが本当に良好な会社の状態であろう。

損益計算書

さて経費を使うと現金や預金が減少する。経費は使う一方で、減少するということはないと考えて良い。ただ計算上減少という事態が起こらない訳ではないが、基本的には無視して良い。

商品の販売で出た利益を粗利益などと言うが、この粗利益を上がるには何等かの経費が掛かっているはずである。給料もそうだろうし、交通費、通信費も掛かる。

だから会社の利益を分析すると粗利益から経費を引いたものということになりそうだ。その結果が営業利益である。数式にすると

粗利益=売上高―原価
営業利益=売上高―(原価+経費) となる。

但し売上毎に利益を計算するのは面倒だし、給料などは1ヶ月単位で支払うものであるから、一回の売上にどのくらい営業利益が出たかを知ることはできないと考えて良い。

これを解消する方法が月単位で営業利益を計算する簡易的な方法が一般的だ。確かに売上毎に粗利益を計算して月毎に合算して月の合計経費を引くやり方が正式ではあるが、それには事務処理に時間が掛り過ぎる。

月単位でみると原価というのは在庫が減少した額である。だが在庫は仕入によって増加もするから在庫が売上によって減少する額、即ち原価は
原価=(月初の在庫額+仕入在庫額)― 月末の在庫額 になる。

しかしここで問題が発生する。同一商品を仕入れた時期が違うと仕入単価が異なることもあり、これを何とか解消しなければならない。例えばコンピューターのプリンターを1月に1台6000円で10台仕入れたが、7月に再度仕入れた時には1台7000円になっていた。

こんなことはしばしば発生することだ。アメリカから商品を輸入する場合支払いは米ドルでなされるのが通常だ。ドルは毎日変動しているので、日本円に換算すると同一商品でも仕入単価は毎回違う。

在庫は単価の違う商品が入り乱れて存在する状態になる。ではそれをどのように解消するのか。通常は先に仕入れた商品を先に出荷するという考えから、残った在庫は最後に仕入れたものと推定して単価を設定するのだ。この在庫の計算方法を最終仕入原価法と言う。

だが最後に仕入れた同種類の商品が先に出荷されるとは限らない。後から仕入れた商品を先に出荷するかも知れない。そうすると在庫額の累計はどうなるのだろうか。どこの時点の在庫を基準にするか決定しなければならない。

最終仕入原価法を採用している会社が大半だと思われるが、この在庫の累計は会社のその年の利益に直結しているので、税務署としては関心があるところだ。だから在庫の累計法は税務署に届けておかなければならない。

税務署としては利益の計算過程を知っておかなければ課税対象額が不明になるので届け出を義務付けている。

ただ考えてみると長い目で見れば平均化されるので、会社としてはどの方法を採用しても3年程度で影響はほぼ無くなると考えて良い。

本当に会社のアップデートの収益状況を把握するには、商品を仕入れた時期ごとに単価を設定して、数量を数えておくのだ。そして古い商品から出荷するとその商品の単価を元に利益を計算して、数量を減少させておくのが良い。

これは手計算では面倒に過ぎるので、やるとすればその計算方式と在庫の増減などをプログラム化しておく以外にないだろう。

だが不思議と計算上の在庫と実物を数えたもの(実在庫と言う)とは食い違いが発生する。だからどの会社でも一年に一度は在庫の数量を数えておくのだ。