輸入貿易会社、社長の仕事術

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勘定科目、反対科目

前述したように決算書、試算表は会社の経営状態を反映させる一覧表である。資産、負債が増減するとこれらの書類の内容が変わる。但し経費については資産、負債ではないが、経費が増加するとその反動で資産の減少や負債の増加が見られるので、これも決算書、試算表に反映させなければならない。 

整理すると決算書は資産、負債、純資産、経費の4項目で構成される。この内訳を勘定科目と言う。複式簿記の場合、勘定科目が変動するとそれに影響されて資産、負債、純資産も変動する。それらを反対科目と称する。

例えば銀行から預金を引き出すと、資産たる預金が減少して、同じく資産である現金が増加する。このこれは資産の増減であるから振替伝票起票の原因になる。

減少した預金を勘定科目、増加した現金を反対科目と言う。逆に増加した現金を勘定科目とし、減少した預金を反対科目として振替伝票を起票しても良い。結果は同じことになるだろう。どちらを先に書くかの違いしかない。

経費である交通費を使うと現金が減少する。交通費を先に書けば交通費が勘定科目で現金が反対科目と言うわけだ。これを現金側から見ると減少する現金が勘定科目、交通費を反対科目とされる。

借方、貸方

資産の増加は決算書上、借方科目と言い、反対の減少は貸方科目だ。逆に負債の増加は貸方科目、減少は借方科目である。経費と純資産は借方だ。覚え方は借りると現金が増加するので借りる、すなわち借方、逆は現金が減少するから貸方だと考えれば覚え易いかも知れない。

決算書の欄の左が借方、右が貸方だ。毎回起票する振替伝票を累計していくと月単位では試算表、決算時期単位では決算書ができあがる。

各勘定科目の月の残高(増加、減少の差し引き)を当月残高と称し、それが次月に繰り越される。繰り越された残高は次月には前月残高となる。決算書だと使う言葉が変り、当期残高、前期残高と言う。

借方と貸方の合計は同額の筈だ。貸借対照表では資産、負債の合計は一番下に書き資産の部、負債の部となる。

損益計算書の経費の合計は販売費一般管理費で、粗利益からこの金額を差し引いたものが営業利益である。これは決算書上では営業損益金額などと言う。この中には勿論交通費など営業するのに掛かる直接の営業経費と事務員などに支払う給料や事務所の賃料なども含まれる。

どのような言葉を使おうが、粗利益から全経費を引いたものが営業利益だ。これがマイナスになると会社は営業的には損失を出していることになる。

会社は資金を銀行などから借りると利息を支払わなければならない。逆に預金利子を受け取ることもある。これの差し引きは会社の全利益に関係してくる。これらを営業外収益と言い、一般の会社は大体がマイナスだ。しかし銀行やローン会社ではプラスであろう。銀行など金貸しが本業の会社ではそれは営業外収益ではなく、営業利益である。

こうして利益が出ると税金を支払い、配当に回し、残った額が純資産に組み入れられる。計算式は次の通りである。

営業利益=売上高―販売費および一般管理費
経常利益=営業利益―営業外損益
純資産額=経常利益―税金―配当―その他(あれば)

このように会社は種々雑多な額を支払い苦労して利益を出し、余剰金を溜めているのだ。経営期間が長く、利益を毎年出していると純資産額が積みあがり、良好な経営状態を示すだろう。

各項目の合計の数字は会社の営業規模を表す。政策的に従業員の数だけを以て中小企業であるとか大企業であるとかの区別は会社の規模の一部だけを表すもので、偏向的と言える。

従業員3人で何千億円の投資をし、毎年何十億の利益を稼いでいる会社もあるだろう。またフランチャイズシステムを引いている会社では従業員数は比較的少ないだろう。

株主が発行する新株を買う決断をするデータとしてこの純資産の額を考慮に入れる。だから純資産額を株主資本と称する。最近の株主はできるだけ多くの配当を得ようと努力する。そうすると会社の体力はその分弱くなる原理だ。

低金利時代銀行の営業利益は少なく、その割に販売費および一般管理費は減少しない。だから人件費などを削減するため、店舗の統合など各種経費節減政策を敢行するのだ。そうすると優秀な人材を採用することができない。銀行、冬の時代だ。