輸入貿易会社、社長の仕事術

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貸借対照表とは

前述したように資産とは財産のことである。財産とはそれを処分したり何等かの処理で最終的に現金に形を変える物や権利その他の物事である。

貸借対照表(財産、借金一覧表)では現金に近い、あるいは現金化するのに簡単なものから順番に上から並べてある。だからもちろん現金が一番上に来る。

その次が預金だ。預金でも外貨預金、定期預金は現金までに少し距離があるから、だんだん下に表記される。売掛金は100%現金に変るとは言い切れない。売った相手会社が倒産することもあるし、何かのトラブルが発生して売掛金の金額が減少する事態も発生する。だから順位は預金より下だ。

前渡金なども資産、すなわち財産の一種だ。前渡金はその後商品などに変り、最終的に現金に変ることがあり得る。だから資産と言えども位はかなり下だ。

これらは絶えず変化する。減少し、消滅し、増加する。だから額は流動的だ。経理的にはこういう資産は流動資産と称する。それに対して使われる言葉は固定資産だ。固定とは言うもののこの名前の資産も不変ではない。

土地や建物、機械、車、他社の株式、などは固定資産だが、その固定資産も完全な固定とは言い切れない。観念的に流動資産は現金に直結しているような項目で、固定資産は物や何かの権利で現金からは程遠い感じがするものだ。

固定資産では現金に近いかどうかが順列を決定する要素にはなっていない。誰かが自分の考えで順列を決めたものだから、どんな順に記載しても構わない。

しかし何等かの基準がないと、丸暗記しなければならないので、一般に使用されている順に上から下へ書いていくのが良いだろう。その基準がどうも額が変化し易いかどうかで決められているようだ。

しかしこんなことは記憶しなくても良い。経理システムを考えた人や使用する言葉を作った人は自らを専門家と考えているので、一般の人が理解し難い言葉や考えを考案したのだ。誰にでも分かれば自分たちの権威が薄くなるのを怖れたのか。

一番下の方に特許権なんてものがある。目には見えないが確かに現金に変化する可能性があるので、資産とされているが、こんなものは資産にする必要があるかどうかは疑問がある。

「どこでもドア」なんて画期的な発明をして特許を取れば必ず売れるだろう。だからこんな発明は資産としても良い。だが猫が室内の何処にいるのかを検知するような器具を発明しても販売には結び付き難い。こんなのは資産とは呼べない。

銀行の誰かに言われたのだが、決算書の内容は社長の意見であるとのこと。

これは名言だと思う。確実に資産として表記しなければならないようなものはそれで良いが、猫感知器などは資産に計上する必要を感じない。それでも計上するというのは単なる意見でしかない。

思い付いた新しい事業を金額に換算してもこれを資産に上げるのは自由だ。資産の額が多いほど負債との差が大きくなり、結果的には利益が増大する。利益が多ければ税務者は喜ぶので、調査でこの処理に文句は言わない。

しかしこの会社を信用して取引をしている会社からすると、実体の信用はその分少ない。このようなことを粉飾決算と言う。それは会社の実態をより良く見せるための嘘で、上場企業でこれをやると罪に問われる。

上場企業でなくても粉飾した決算書で銀行から融資を受けると詐欺罪を構成することになる。しかしそうでなくても決算書を要求している仕入先に対しては嘘を付いているわけであるから、詐欺罪に問われる可能性がある。

但し警察は詐欺事件をほとんど捜査しないので、刑事事件で訴追されることは少ない。しかし民法は別だ。訴訟は簡単で、個人でも訴訟をする人が多い。そんな場合で何かの損をすれば損害賠償の対象になる。

決算書は社長(経営者)の意見と至言が述べられたように、どうとでも改竄が可能である。銀行は決算書の内容を自動的に点数化するシステムを導入しているが、巧妙に改竄するとシステムでは改竄を発見できない。

だから銀行が融資するのは決算書ではなく、社長の人柄や能力、健康状態などを主に観察して決定するのだ。